器物損壊事件の弁護活動
器物損壊事件の弁護活動
今回は、器物損壊事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
神奈川県横浜市に住むAさんは、会社の同僚女性Vのバッグに体液をかけるなどしていました。
Vはこれに気付き、上司と警察に相談しました。
Vは警察に告訴状を提出し、神奈川県磯子警察署は器物損壊被疑事件として捜査を開始しました。
社内の監視カメラにより、Aさんの犯行であることが判明すると、警察はAさんを器物損壊の疑いで逮捕しました。
会社をクビになるのは仕方ないとしても、前科を付けることを避けたいAさんはどうするべきでしょうか。(フィクションです)
~器物損壊事件とは?~
器物損壊罪とは、公用文書、私用文書、他人の建造物又は艦船以外の、他人の物を損壊する犯罪です(刑法261条)。
「公用文書」、「私用文書」、「他人の建造物又は艦船」を破いたり、破壊した場合には、それぞれ別の犯罪が成立します。
「損壊」とは、その物の効用を害する行為をいいます。
物を物理的に壊す行為はもちろん含まれますが、事実上使えなくすることも、物の効用を害する行為として「損壊」に該当する可能性があります。
たとえば、裁判でも、食器に放尿する行為(大審院明治42年4月16日判決)などが「損壊」に該当するとされています。
Vのバッグに体液をかけた行為についても、「損壊」と判断される可能性が高いでしょう。
~今回の弁護活動~
一般的な器物損壊事件など比較的軽い犯罪では、逮捕されずに捜査が進められ、自宅から警察署等に出向いて取調べを受けるといったケースも多いです(在宅事件といいます)。
しかし今回のケースの場合は、器物損壊事件の中でも、自身の性的な満足を得るためになされた犯行と考えられます。
このような事件の場合、被疑者が被害者になお接触を試みたりするおそれが高いと判断され、逮捕されることも多く、また身体拘束の期間も長くなることが考えられます。
身体拘束が長引くと、Aさんにも負担がかかるので、なるべく早期の釈放を目指す必要があります。
今回のケースでは逮捕された直後なので、弁護士に、勾留がつかないよう活動してもらう必要があります。
勾留とは、逮捕後に最大3日間身体拘束されて取調べ等を受けた後、逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に引き続きなされる身体拘束のことを言います。
弁護士としては例えば、Aさんがすでに会社をクビになっていれば、釈放したとしても、再び会社に出勤する必要がないので、Vと会う可能性はなく、被害者を脅して供述を変えさせるなどの証拠隠滅の一種の行為をする可能性は低いと主張することが考えられます。
また、AさんとVの居住地が離れていれば離れているほど、やはり証拠隠滅のおそれが低いと判断される可能性が高まり有利です。
さらに、Aさんの行動を監督できる身元引受人を用意できれば、勾留が付かずに済む可能性がより高まります。
この勾留は、検察官による勾留請求があり、これに対して裁判官が勾留決定をした場合になされます。
弁護士は、検察官や裁判官に対し、勾留請求、勾留決定をしないよう働きかけていくことになります。
勾留されてしまった後は、勾留決定に対する不服申し立て制度を用い、釈放を求めて活動することが考えられます。
~示談して告訴状を取り下げてもらう~
器物損壊事件は、告訴がなければ絶対に刑事裁判にかけられません(親告罪)。
ということは、誠心誠意、Vへの謝罪と賠償を尽くして示談を結び、告訴を取り下げてもらうことがとても重要です。
Aさんは逮捕されているので、外で活動することができません。
したがって、Aさんが依頼した弁護士に、外でVと接触してもらい、示談交渉を行うことになります。
Vと示談が成立すれば、釈放される可能性も高まります。
弁護士からアドバイスを受けながら、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が器物損壊事件を起こしてしまいお困りの方は、ぜひご相談ください。