居直り強盗事件で逮捕
居直り強盗事件で逮捕
居直り強盗事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、埼玉県八潮市に済むVさんが多額の貯金を持っているという話を聞き、留守中のVさん宅に侵入し、通帳等を盗み出そうと計画しました。
そしてAさんは、計画通りVさん宅に侵入し、金品を物色。
Vさんの通帳を発見したAさんがこれを盗もうと思っていたところ、帰宅したVさんに発見されてしまいました、
焦ったAさんはVさんが抵抗する様子を見せなくなるまで所持していたスパナでVさんを数回殴り、Vさんに全治2か月のけがを負わせました。
そのまま通帳を持って逃走したAさんでしたが、後日、この事件を捜査していた埼玉県草加警察署に強盗致傷罪と住居侵入罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの逮捕を知ったAさんの家族は、埼玉県の刑事事件に強い弁護士への相談を考えています。
(※この事例はフィクションです。)
・居直り強盗とは?
居直り強盗とは、初めは空き巣など窃盗をするつもりで盗みに入った者が家人などに見とがめられ、急に態度を豹変させ強盗となるケースの強盗を指します。
Aさんのように空き巣から強盗になった場合、住居侵入罪と強盗罪あるいは強盗致傷罪などに問われる可能性があります。
・住居侵入罪
Aさんの逮捕容疑の1つには、住居侵入罪があります。
住居侵入罪は、刑法に以下のように定められています。
刑法第130条(住居侵入罪)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
なお、住居侵入罪には未遂罪の規定もあるため、もしも住居侵入行為自体をなし得なかったとしても住居侵入未遂罪という犯罪に問われる可能性があることにも注意が必要です。
住居侵入罪の条文にある「住居」とは、一般に人の起臥寝食に使用される場所を指します。
一方、「邸宅」とは、住居用に作られた建造物とこれに付随する囲繞地(塀や柵などで囲まれている土地)のことを指し、邸宅に侵入した場合には同じ条文に基づく犯罪ですが邸宅侵入罪と呼ばれたりもします。
そして、住居侵入罪の条文にある「人の看守する」とは、管理人や監視人がいたり鍵がかけられていたりといった、現実に人が支配・管理している状況を指します。
また、住居侵入罪の「侵入」とは、住居権者またはその委任を受けた看守者等の推定的意思を含む意思に反して、住居等の領域に立ち入ることと理解されています。
すなわち、その住居を管理している人の意思に反してその住居に立ち入ることで「侵入」したと判断されるのです。
今回の事例においても、AさんがVさん宅に立ち入ったことについてVさんの承諾はありませんし、窃盗目的に住居に入ることをVさんが承諾するとは思えませんから、Aさんの侵入行為は住居侵入罪に当たると考えられるでしょう。
・強盗致傷罪
今回の事例では、AさんはスパナでVさんを殴打しけがを負わせたうえでVさんの通帳を持ち去っています。
ここで、強盗行為について定めた刑法の条文を見てみましょう。
刑法第236条第1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
刑法第240条(強盗致死傷罪)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
今回の事例では、Vさんに見つかっても暴行や脅迫がなければ通常の空き巣と同様に住居侵入罪に加えて窃盗罪(刑法第235条)などとなる可能性が高いですが、今回のケースでは強盗致傷罪の適用が考えられます。
強盗致傷罪は強盗の機会に相手に傷害を加えることで成立します。
よってAさんの行為が強盗に当たるかがまず問題となります。
強盗罪が成立するためには、手段として暴行・脅迫がなければなりません。
また、その暴行・脅迫は反抗を抑圧するに足りる程度の強さのものでなければなりません。
そして、暴行・脅迫は,財物を奪うため=財物奪取の手段として行われる必要があります。
そのため、暴行・脅迫によって相手の反抗が抑圧された後に財物奪取の意思が生じたような場合には強盗罪とはなりません(大判昭和8年7月17日)。
ただし、財物奪取の意思を生じた後に新たに反抗を抑圧する程度の暴行・脅迫があったことが認められれば強盗罪に問われる可能性があります。
加えて、「強取」とは、暴行・脅迫によって相手方の反抗を抑圧し、財物の占有を移転することを意味します。
ここでの占有とは、財物に対する事実上の支配状況のことで、他者の管理の及んでいる状態(例えば、鍵付きの金庫に保管してある状態やすぐ手の届く場所に置いてある状態にあるなど)があれば占有があると認められる場合が多いです。
今回の事例のAさんはVさんが反抗の姿勢を見せなくなるまでスパナで殴打していますので、強盗罪が要求している強度の暴行の存在が認められるでしょう。
また、Aさんの暴行行為がVさんの通帳を盗むためだということが立証されれば強盗致傷罪の成立が認められることになると考えられます。
強盗致傷事件は、裁判員裁判の対象ともなる重大な刑事事件です。
居直り強盗による強盗事件・強盗致傷事件の被疑者となってしまった方、ご家族やご友人が居直り強盗事件で逮捕されてしまってお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。