強盗事件を起こし緊急逮捕

2020-03-07

強盗事件を起こし緊急逮捕

今回は、刑事手続としての逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~
Aさんは、東京都小金井市にあるコンビニエンスストアで、刃物を示す等して店員を脅迫し、現金15万円を奪って逃走しました。

警視庁小金井警察署は直ちに捜査を開始し、犯行時刻から2時間後、犯行場所から60キロメートル離れた場所においてAさんを発見したので、職務質問をしました。
Aさんは自動車に乗っており、今にも逃走しそうな様子でしたが、説得を重ね、車内を点検することができました。
その結果、車内から現金15万円、及び犯行に使われた刃物や覆面マスクが発見されました。
Aさんは強盗の疑いで緊急逮捕されてしまいました。

Aさんは逮捕される際「令状がないのになんで逮捕できるんだ」と不満を募らせました。
接見にやってきた弁護士に、逮捕手続は適法であったのか尋ねてみようと考えています(フィクションです)。

~「逮捕」とは何か?~

逮捕」とは犯罪をしたと疑われている被疑者の身柄を拘束する強制処分です。
「逮捕」するには原則として裁判所が発行する令状(逮捕状)が必要です。

「逮捕」には以下の3種類があります。

・通常逮捕
・緊急逮捕
・現行犯逮捕

以下、1つずつ解説いたします。

【通常逮捕】
通常逮捕とは、逮捕状による逮捕をいいます。
捜査機関が裁判官に逮捕状を請求し、その発付を得て、被疑者を逮捕する手続です。

通常逮捕を行うためには、①逮捕の理由、②逮捕の必要性が要件となります。
これらを満たさない逮捕は違法となります。

※ ①逮捕の理由について
ある人が、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があることをいいます。

※ ②逮捕の必要性について
正確には、「明らかに逮捕の必要がない」とき、逮捕の要件を満たさないことになります。
したがって、逮捕の必要性が「不明」の場合は、実務上、令状発付が可能とされています。

【緊急逮捕】
①死刑または無期もしくは上限(長期)が3年以上の懲役・禁錮にあたる罪であり、②その人がこの犯罪をしたことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、③急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき、その理由を告げて行うことができる逮捕です。

今回のケースでは緊急逮捕がなされているので、①②③の条件を満たすのか検討してみます。

まず、強盗罪の刑罰の上限(長期)は20年の懲役ですから、3年以上という①の条件をみたします。
また、手配された犯人の容貌とAさんの容貌が類似していること、Aさんの車内から強取された現金と同じ金額の現金、犯行に用いられた刃物、覆面マスクが発見されたことから、②も満たしているでしょう。
そして、Aさんは自動車に乗っており、今にも逃走しそうな様子だったので、③も満たしているでしょう。

したがって、緊急逮捕の条件を満たしている可能性が高いと思われます。

緊急逮捕するその時には、令状は不要ですが、逮捕後、「直ちに」逮捕状を請求しなければなりません。
逮捕状が発付されないときは、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

【現行犯逮捕】
現に罪を行い、あるいはまさに今行い終わった者現行犯人といいますが、この現行犯人は、誰でも逮捕状なく逮捕することができます。
誰でも逮捕可能ですから、民間人であっても、現行犯逮捕することができます。
民間人による現行犯逮捕がなされたと扱われるケースはしばしば見受けられます。

緊急逮捕と異なり、逮捕後に逮捕状を請求する必要もありません。
現行犯は、犯罪をしたことがが明白な場合なので、裁判官による逮捕の適法性のチェックを行わなくても、誤った逮捕のおそれが少ないため、逮捕状は不要とされているのです。

また、犯罪をまさに今行い終わった者とまでは言えなくても、犯人として追いかけられているといったの場合であり、罪を行い終わってそれほど間がないと明らかに認められる場合も、「準現行犯」として、現行犯人とみなされることになります。

~今後の弁護活動~

Aさんが逮捕の手続の適法性について弁護士に尋ねたとしたら、概ね上記の様な説明をされるでしょう。

もちろん、緊急逮捕の条件を満たしていないのに逮捕されてしまったのであれば、即、釈放するよう求めて活動しなければなりません。

場合によっては、逮捕後に捜査機関が取得した証拠(たとえば取調べの記録である供述調書など)の証拠能力を否定できる場合もあります。
証拠能力が否定されると、その証拠は刑事裁判において事実の認定に使うことができなくなります。
たとえば、犯罪を自白している供述調書が裁判で使えなくなると、裁判にかけられている人に有利になります。

弁護士はこのような弁護活動をしていくこともできますので、一刻も早く、弁護士を相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が強盗事件などを起こして逮捕されてしまった方は、ぜひ初回接見サービスをご依頼ください。