【事例解説】傷害の共謀 自分はやっていないと不満 

2024-06-16

傷害の共犯として警察の取調べを受けることになったものの、自身は殴っていないとして納得せず弁護士に相談するに至った事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

事例 

アルバイトのAさんは、アルバイト先の社員Vさんと険悪な仲でした。ある日アルバイト先の同僚BさんとVさんの悪口を話していた際に、一回痛めつけてやろうという話になり具体的な暴行計画について話し合うことになりました。
AさんとBさんの計画では、AさんがVさんを尾行してVさんの位置をBさんに随時報告し、タイミングを見計らってBさんがVさんを後ろから殴り、あとでAさんも暴行に加わるというものでした。 
計画通り、Vさんに対してBさんが殴ることに成功しましたが、攻撃を受けたVさんが大声をあげて周りに助けを求めたため、AさんとBさんはその後の暴行をやめて二人で逃げました
Vさんは頭部裂傷と皮下血種の傷害を負いましたが、大事には至りませんでした。
Vさんの被害供述をもとにBさんが取調べに呼ばれ、Aさんの関与を明らかにしたためAさんも警察から呼び出しを受けるに至りました。
自身は暴行行為を加えていないAさんは、自分も傷害罪の罪を負うことになるのか気になり弁護士に相談してみることにしました。

傷害罪の共謀共同正犯について 

刑法60条出典/e-GOV法令検索)は、「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と定めています。 
共同正犯は、実行共同正犯共謀共同正犯に分けられます。
実行共同正犯とは、共同行為者全員が実行行為を分担し合って犯罪を実現する場合を言います。
例えば、2人でVさんの殺害計画をして、計画に基づきVさんに2人でそれぞれピストルを発砲し死亡させたような場合です。
このように、2人が共同して実行する意思の下に発砲した場合には、もしいずれの弾が命中したかがわからなくても2人とも実行共同正犯として殺人既遂罪の責任を負います。 
共謀共同正犯とは、2人以上の者が犯罪を実現するための謀議をし、共犯者の一部の者のみが実行行為を行う場合をいいます。 
これが認められる場合には、実行行為をしていないものについても共同正犯として発生した犯罪事実すべての責任を負うことになります。
成立要件としては、①共謀、②共謀に基づく実行行為が必要となります。

共謀とは、共同犯行の合意形成をいいます。これは意思連絡および正犯意思によって判断されます。 
簡単にいうと、意思連絡は共同犯行の意識について関与者間に意思疎通があったか、正犯意思は自分たちの犯罪を遂行しようとする意識があったかが問題になります。

共謀に基づく実行行為は、共謀に基づいて少なくとも共謀者の1人が実行行為があった場合に認められます

事例のAさんの場合 

Aさんは、Vさんに直接暴行行為をしていないため、Aさんが傷害罪の「正犯」として処罰されるかは、共謀共同正犯が成立するか否かにあります。 
共謀共同正犯の成立要件を簡単に検討していくと、共謀についてはAさんとBさんはVさんに暴行を加える計画を綿密に立てており、意志の連絡が十分にあるといえます。また、どちらも自らの犯罪として実行する意思を有しているため正犯意思も認められそうです。
そうすると、共謀は認められそうです。
次に、AさんとBさんの共謀に基づいて、BさんがVさんに傷害を加えているため、共謀に基づく実行行為も認められるでしょう。
そうすると、傷害行為に加わっていないAさんについても共謀共同正犯として「傷害罪」の「正犯」としての責任を負うことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決や不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。