【事例解説】大音量でテレビを流して隣人を睡眠障害に(前編)

2024-03-31

深夜早朝にかけて大音量でテレビを流して隣人を睡眠障害等にかからせた事例について、前編と後編の2回に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

騒音

・事件概要

京都府北警察署は、傷害罪の疑いで看護師の男(43)を逮捕した。
警察署によると、男は、昨年から1年間にわたって週に3回ほど、自分が病院の夜間勤務で家を空けている日の深夜から自宅に帰る早朝にかけて大音量でテレビを流しっぱなしにして隣人に精神的ストレスを与えたとされている。
被害にあった隣人は、精神科の医師から睡眠障害と診断され、慢性頭痛症円形脱毛症となり警察署に被害届を提出した。
取調べに対し、男は、「自分が夜勤明けで眠たい昼間に隣人がうるさくて腹がたっていた」「静かにするよう言っても一向に改善されないので、同じ目に合わせてやろうと思ってやった」と述べている
(フィクションです)

・傷害罪とは

刑法204条(出典/e-GOV法令検索)

人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、何らかの方法により人の身体を「傷害」する犯罪です。
判例によれば、傷害とは人の生理的機能に障害を加えることです(大判明治45年6月20日)
傷害という結果を生じさせる行為は、典型的には、人を殴って出血させる行為などがこれにあたります。
もっとも、傷害の罪に問われる行為は、このような殴る蹴る突き飛ばすといった目にみえる形での行為に限定されてはいません。
傷害という結果を招く危険性のある行為であれば、それが目に見えないような行為であっても傷害罪の行為に該当する可能性があります。
最高裁は、類似の事案で、およそ1年半にわたって隣人に対して朝から夜ないし翌未明まで、ラジオの音声や目覚まし時計のアラームを大音量で鳴らすことで被害者に精神的ストレスを与え、結果、被害者に全治不詳の慢性頭痛症、睡眠障害、耳鳴り症の傷害を負わせた事件において、当該行為は傷害罪の実行行為にあたるとしました(最高裁決定平成17年3月29日)。

 

事例に当てはめてみると

加害者の男は、隣人に対し、約1年間にわたって週に3回ほど、自分が病院の夜間勤務で家を空けている日の深夜から自宅に帰る早朝にかけて大音量でテレビを流しっぱなしにして隣人を睡眠障害と慢性頭痛症にかからせたとされています。
1年間にわたって、週の半分の頻度で深夜早朝に大音量のテレビを流された場合、十分な睡眠がとることができず疲労が蓄積していまうでしょう。
その結果、日中の行動にも支障が生じてさらに疲労が溜まってしまうものの、深夜早朝の騒音により心身の状態は改善されず、精神的に疲弊し、慢性的な頭痛や睡眠障害などにかかってしまう可能性があります。
したがって、男のした行為は、慢性的な頭痛や睡眠障害という症状を生じさせる現実的危険性がある行為と言えそうですから傷害罪が成立する可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得のほか、量刑を軽くしたり執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。