【事例解説】家のベランダに集まるハトを勝手に駆除―鳥獣保護管理法違反事件
家のベランダに集まるハトを勝手に駆除した鳥獣保護管理法違反事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
Aさんは、自宅のベランダに集まった野生のハトが残していったフンによってベランダが汚れることに頭を悩ませていました。
Aさんは、ベランダにハトが寄ってこないように対策を打っていましたが、どのような対策をしても効果がなくベランダにはハトが集まってきてしまいます。
ある日、我慢の限界を迎えたAさんは怒りに任せて、ベランダに集まったハトに植木鉢を投げつけるなどしてハトを数匹殺しました。
その後、冷静になったAさんは、野生のハトを殺すことは犯罪なのではないかと不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談に行くことにしました。
(この事例はフィクションです)
鳥獣保護管理法について
つい最近のニュースで、タクシーの運転手がタクシーでハトの群れに突っ込んでハトを1羽ひき殺したとして鳥獣保護管理法違反の疑いで逮捕されたという事件が報道されました。
このニュースを見て、そんなことで罪に問われるのかと驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、鳥獣保護管理法(正式には「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」と言います。)の第8条では一定の例外を除いて、原則として「鳥獣」を捕獲・殺傷することや「鳥類の卵」を採取・損傷することを禁止しています。
この捕獲や殺傷が原則として禁止されている「鳥獣」とは、鳥獣保護管理法2条1項によって鳥類又は哺乳類に属する野生動物と定義されています。
そうすると、事例に登場する野生のハトは鳥類に属する野生動物ですので「鳥獣」に該当することになり、事例のAさんは鳥獣である野生のハトを故意に殺傷したということになり、鳥獣保護管理法8条の規定に違反することになると考えられます。
鳥獣保護管理法8条の規定に違反すると同法83条1号によって、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、「鳥獣」の定義については法律上、鳥類又は哺乳類に属する野生動物としか記載されていませんので、本来であれば日本に生息していない外来種の鳥類・哺乳類であっても、日本で野生動物として生息しているのであれば鳥獣保護管理法の適用の対象になる「鳥獣」に該当することになります。
ただし、この「鳥獣」に該当したとしても、「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるもの」(鳥獣保護管理法80条1項)については、例外的に鳥獣保護管理法の適用対象外になります。
「環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣」としては、ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミの家ネズミが当たるとされ、「他の法令により捕獲等について適切な保護若しくは管理がなされている鳥獣」としては、ニホンアシカ、ゼニガタアザラシ、ゴマフアザラシ、ワモンアザラシ、 クラカケアザラシ、アゴヒゲアザラシ、ジュゴン以外の海に生息する哺乳類が当たるとされていますので、これらの鳥獣を殺傷したとしても鳥獣保護管理法は適用されないということになります。
動物を殺傷したことで罪に問われないかとご不安な方は
動物を故意に殺傷したことで罪に問われないかとご不安に思われている方は、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
殺傷した動物が「鳥獣」に当たるのであれば鳥獣保護管理法違反になる可能性がありますし、「鳥獣」に該当しない動物を殺傷した場合でも、その動物の種類によって、動物愛護法違反や刑法261条の器物損壊罪が成立する可能性も考えられます。
そのため、動物を殺傷してしまったという場合は、弁護士に相談することで自身の行為がどのような罪に問われる可能性があるのか、今後どのような対応をとるべきなのかといったことについてアドバイスを貰うことができますので、事件の見通しを立てることができ、現在抱えている不安な気持ちを解消することが期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件に強い法律事務所です。
動物を殺傷したことで罪に問われないかとご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。