【報道解説】部活動の指導による傷害罪で逮捕
【報道解説】部活動の指導による傷害罪で逮捕
高校の部活動において、指導者による生徒に対する行き過ぎた指導で怪我をさせ、傷害罪の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「千葉県内の県立高校でバレーボール部の女子部員にボールを投げつけてけがを負わせたとして、松戸署は29日、男性教諭(50)(東京都港区)を傷害容疑で逮捕した。
発表によると、男性教諭は5月2日午前8時15分頃、高校の体育館で顧問を務めていたバレー部の練習中、女子部員の顔にボールを数回投げつけ、全治1週間のけがを負わせた疑い。
女子部員がプレーでミスしたことに腹を立てたとみられる。
男性教諭は容疑を一部否認しているという。
県教育委員会は、この女子部員の顔などにボールを少なくとも3回投げる体罰があったとして、男性教諭を今月22日付で戒告の懲戒処分にした。」
(6月29日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用。)
【部活動の指導が犯罪に?】
一般的に、体罰を伴う等の厳しい指導について「スパルタ指導」や「しごき」と称することがあります。
そして、学校の部活動などにおいても、指導者が生徒達に威圧的な指導をしている場面を目にしたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
もちろん、単に厳しい指導であれば刑事罰に問われることはないかもしれませんが、体罰を伴う行き過ぎた指導は、法令に抵触して刑事罰に問われる場合があります。
今回取り上げた報道も、バレーボールの指導中に行った振る舞いが犯罪に当たるとの理由で逮捕されたと考えられるケースです。
バレーボールの練習中に、指導者が生徒の顔にボールを数回投げつけて、全治1週間の怪我を負わせたということであれば、これは刑法204条が定める傷害罪に当たる可能性が高い行為になりますので、今回、警察は指導者の方を逮捕するに至ったのでしょう。
なお、傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
【傷害を負わせる意図、故意】
報道のような事件において傷害罪が成立するためには、ボールを投げて怪我をさせたという事実に加えて、生徒の顔をめがけてボールを投げつけてやろう、あるいは怪我を負わせてやろうという意思のもとにボールを投げたという場合や、顔に当たっても構わないあるいは怪我をしても構わないという意思のもとでボールを投げたということが必要になります。
仮に、このような意思がなく、生徒に当てるつもりは全くなかったが、誤って顔をボールに当ててしまい、それによって生徒が怪我をしたということであれば、傷害罪ではなく、刑法209条の過失傷害罪が成立する可能性があります。
過失傷害罪の法定刑は、30万円以下の罰金又は科料となっており、傷害罪の法定刑よりも軽くなっています。
【部活動の指導で被害届を出されたら】
学校の中で起きた事件には警察が介入することはないと思われるかもしれませんが、学校内で起きた事件についても、犯罪に当たる可能性があり、事件について被害届を提出するといった方法で警察に報告すれば、警察が動き出して学校内の事件が一気に刑事事件へと発展する可能性は当然ありますし、場合によっては、今回取り上げた報道のように逮捕に至るという可能性は十分にあります。
そのため、部活動で生徒に対して行き過ぎた指導を行ってしまい、生徒に被害届を出されてお困りの方は、まずは、弁護士に相談して、事件の見通しや、今後の対応方法等についてアドバイスをもらうことをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
部活動の指導に関して警察に被害届を出されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。