噂話が名誉毀損事件に?
噂話が名誉毀損事件に?
噂話が名誉毀損事件に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、埼玉県さいたま市中央区にある会社に勤めている会社員です。
ある日、Aさんは会社の近くで痴漢事件が起きたことを知り、その時間に同僚のVさんが現場近くにいたところを目撃していたことから、Vさんが痴漢事件の犯人に違いないと思い込みました。
そしてAさんは、会社の休憩室で、同僚のXさんやYさんの2人に「Vさんが痴漢事件を起こした」という話をしました。
その後もAさんは上司のZさんと休憩時間が重なった時にも「Vさんが痴漢事件を起こした」という話をしました。
こうしたことが重なり、Aさんは会社の上司や同僚、後輩合わせて7人に同じ話をしました。
その結果、「Vさんは痴漢魔だ」という噂が会社に広まってしまいました。
Vさんは困ってしまい、埼玉県浦和西警察署に相談。
Aさんは名誉毀損罪の容疑で埼玉県浦和西警察署で取調べを受けることになりました。
Aさんは噂話程度のつもりでいたため、突然刑事事件の当事者になったことで今後の手続きに不安を感じ、弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・噂話程度でも名誉毀損罪になる?
名誉毀損罪は、刑法に定められている犯罪の1つです。
刑法第230条(名誉毀損罪)
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
昨今、SNSでの誹謗中傷などでも話題に登ることのある名誉毀損罪ですが、今回の事例のAさんは会社で噂話をして名誉毀損罪に問われているようです。
名誉毀損罪が成立する条件として「公然と」事実を示すことが必要ですが、今回の事例のAさんは休憩室などで合計7人に対して噂話程度に話しただけです。
こうしたケースでも名誉毀損罪の「公然と」という条件に当てはまるのでしょうか。
名誉毀損罪のいう「公然と」とは、不特定又は多数人が知り得る状態を指します。
昨今話題になることの多いSNSでの誹謗中傷は、SNSという不特定多数の人が閲覧可能な場で行われることから名誉毀損罪の「公然と」という条件を満たすことになります。
今回の事例では、確かにAさんが話した場所としては、会社の休憩室という個室であり、話した相手も少数といえます。
しかし、たとえAさんが直接話した相手が特定の人で少数しかおらず、また場所が限定的だったとしても、それが他の人に伝播し、結局不特定又は多数人が知り得る可能性がある以上、公然性は認められると考えられます。
さらに、Aさんが話した相手はAさん・Vさんと同じ会社に勤務する人たちですから、噂話として不特定又は多数人に伝播する可能性は十分に考えられるため、Aさんに名誉毀損罪が成立する可能性はあるということになります。
似たような事例で、近所の人を含む計7人に「あの人は放火犯だ」と話した結果、その伝播可能性から名誉毀損罪が認められた判例も存在します(最判昭和34.5.7)。
ここで注意しなければいけないのは、「話した相手が7人だから名誉毀損罪」「話した相手が2人だから名誉毀損罪にならない」といったことではないということです。
話した人数によって名誉毀損罪の成否が左右されるのではなく、あくまで伝播可能性の有無などの詳しい状況を含めて判断しなければなりません。
名誉毀損罪に当たるか否かの判断は難しいケースが多く、事件の態様も多岐にわたりますから、名誉毀損事件の当事者になってしまったら、弁護士に相談することをおすすめします。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、名誉毀損事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
噂話から名誉毀損事件に発展してしまった、名誉毀損事件への対応に困っているという方は、まずはお気軽にご相談ください。