【事例解説】包丁を突きつけて脅迫 暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕

2023-09-01

 包丁を突きつけながら脅迫行為をしたことで、暴力行為等処罰法違反の疑いで警察に逮捕された事件ついて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、自宅で、同居している父親のⅤさんと些細なことから口論になりました。
 Aさんは怒りの余り、Ⅴさんに対して包丁を突きつけながら「殺すぞ」と言い放ちました。
 この様子を見たAさんの母親が、警察に通報したところ、Aさんは、駆け付けた警察官に暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されました。
(この事例はフィクションです)

包丁を突きつけながら「殺すぞ」と言うとどのような罪に問われる?

 事例のAさんは、Vさんに対し包丁を突きつけながら「殺すぞ」と言っています。
 「殺すぞ」という発言は人の生命に害を加える旨を告知していることになりますので、刑法222条が規定する脅迫罪に当たることになります。
 ところが、Aさんは脅迫罪ではなく暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されています。

 暴力行為等処罰法(正式には「暴力行為等処罰に関する法律」といいます)の1条では、一定の場合に行われた脅迫行為を刑法よりも重く処罰しています。
 どのような場合に行われた脅迫行為暴力行為等処罰法1条によって処罰の対象になるかというと、実際に団体や多衆で威力を示して脅迫行為を行った場合や、団体や多衆であるかのうように仮装して威力を示して脅迫行為を行った場合、凶器を示して脅迫行為を行った場合、数人で共同して脅迫行為を行った場合です。
 事例のAさんは、包丁という凶器を示しながら「殺すぞ」という脅迫行為を行ったため、暴力行為等処罰法違反の疑いで逮捕されたと考えられます。
 暴力行為等処罰法1条の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金となっています。
 これは、刑法222条が脅迫罪の法定刑を2年以下の懲役又は30万円以下の罰金としていることと比較すると、暴力行為等処罰法1条の法定刑の方が刑法222条の脅迫罪の法定刑よりも重いことが分かると思います。

 なお、暴力行為等処罰法1条は、脅迫罪以外にも、傷害罪(刑法204条)、暴行罪(刑法208条)、器物損壊罪(刑法261条)といった犯罪も適用の対象にしていますので、団体や多衆で威力を示して暴行行為をした場合や、数人で共同して器物損壊をした場合などにも暴力行為等処罰法1条によって罰せられる可能性があります。

暴力行為等処罰法違反の疑いで警察の捜査を受けられている方は

 先ほど簡単に説明した暴力行為等処罰法1条で規定されている場合以外では、たとえば、銃砲や刀剣類を用いて人の身体を傷害した場合には暴力行為等処罰法1条の2第1項によって1年以上15年以下の懲役が科される可能性がありますし、また、常習的に傷害罪、暴行罪、脅迫罪、器物損壊罪を行った場合には、暴力行為等処罰法1条の3第1項によって3月以上5年以下の懲役が科される可能性もあります。
 この他にも、暴力行為等処罰法では刑罰の対象にしている行為を規定していますので、暴力行為等処罰法違反の疑いで警察の捜査を受けられている方は、いち早く弁護士に相談して、自身がどのような罪に問われる可能性があるのか、弁護活動としてどのような対応をとることができるのかといったことについてアドバイスを貰われることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所暴力行為等処罰法違反事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 暴力行為等処罰法違反の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。