【事例解説】刑務官による特別公務員暴行陵虐事件

2023-09-08

 刑務官による特別公務員暴行陵虐事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 刑務官であるAさんは、詐欺罪の懲役刑で服役中であるVさんの刑務作業中の態度が悪かったことに腹を立てて、Vさんのお腹を手拳で1回殴りました。
 この様子を見ていた他の刑務官が、上司に報告したことから、Aさんは内部で調査を受けることになりました。
 後日、Aさんは、上司から、「今回の件は刑事事件になる」という話を聞きました。
(この事例はフィクションです)

刑務官が受刑者に暴力を振るうとどのような罪に問われる?

 普通の会社員の方が、路上で通行人とトラブルになって、通行人のお腹を1回殴った場合は、刑法208条の暴行罪が成立すると考えられます。
 事例のAさんも、Vさんのお腹を1回殴るという上記の暴行と同じ暴行を加えていますが、Aさんは会社員ではなく刑務官という立場で、仕事中に受刑者を殴っています。
 このような場合には、暴行罪ではなく、暴行罪よりも重い特別公務員暴行陵虐罪が成立する可能性があります。

特別公務員暴行陵虐罪とは

 特別公務員暴行陵虐罪は刑法195条に規定されている犯罪で、一定の立場にある公務員が、仕事をするにあたって、およそ職権の行使とは言えない違法行為を行った場合を処罰の対象にしています。

 職務の行使とは言えない違法行為として、刑法195条では、事例のAさんのような「暴行」「陵辱若しくは加虐」の2つを規定しています。
 ここでの「暴行」は暴行罪の暴行と同じ意味で、人を殴る蹴るといった身体に対する不法な有形力の行使のことです。
 そして、「陵辱若しくは加虐」(陵虐)とは、暴行以外の方法で、精神的・肉体的に苦痛を与える行為を意味しています。

 また、どのような公務員が誰に対して暴行・陵虐行為をした場合に罪に問われるかというと、まず、刑法195条1項では、裁判、検察若しくは警察の職務を行う者や、これらの職務を補助する者が、被告人や被疑者、証人や鑑定人などのその他の者に対して暴行・陵虐行為を行った場合を規定しています。
 次に、刑法195条2項では、法令により拘禁された者を看守し又は護送する者が、その拘禁された者に対して暴行・陵虐行為を行った場合を規定しています。

 取り上げた冒頭の事例では、Vさんは詐欺罪の懲役刑で服役していますので195条2項にいう法令により拘禁された者に当たり、Aさんはそのような法令により拘禁された者である受刑者を看守する刑務官という立場になります。
 そのため、刑務官であるAさんが、受刑者のVさんを仕事中に殴ったという冒頭の事例では、Aさんに刑法195条2項による特別公務員暴行陵虐罪が成立すると考えられます。

 特別公務員暴行陵虐罪の法定刑は、7年以下の懲役又は禁錮となっています。
 暴行罪の法定刑が、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっていることと比較すると分かるように、特別公務員暴行陵虐罪の法定刑は、暴行罪の法定刑よりも重くなっています。

特別公務員暴行陵虐事件で捜査を受けられている方は

 このように特別公務員暴行陵虐罪は単なる暴行罪と比較して非情に刑が重い犯罪であると言えますので、特別公務員暴行陵虐罪として逮捕、起訴される可能性があるという方は、いち早く弁護士に相談して、事件の見通しや今後の対応等についてアドバイスを貰われることをお勧めします。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 特別公務員暴行陵虐事件で内部の調査を受けて逮捕、起訴される可能性があるという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。