【事例解説】直接暴行をしていないが取調べを受けることに(後編)
直接暴行をしていないものの傷害の共犯として警察の取調べを受けることになった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
建築会社で働いているAは、その会社の社員Vとの険悪な仲でした。ある日、同僚のBとVの悪口を話していた際に、Vを痛めつけてやろうという話になり具体的な暴行計画について話し合うことになりました。
AとBの計画では、AがVを尾行してVの位置をBに随時報告し、タイミングを見計らってBがVを後ろから殴り、あとでAも暴行に加わるというものでした。
計画通り、Vに対してBが殴ることに成功しましたが、攻撃を受けたVが大声をあげて周りに助けを求めたため、AとBはその後の暴行をやめて二人で逃走しました。
Vは頭部裂傷と皮下血種の傷害を負いましたが、大事には至りませんでした。
Vの被害供述をもとにBが取調べに呼ばれ、Aの関与を明らかにしたためAも警察から聴取を受けるに至りました。
自身は直接暴行行為を加えていないAは、自分も傷害罪の罪を負うことになるのか気になり弁護士に相談してみることにしました。
(フィクションです)
今回の事例の場合
Aは、Vに直接暴行行為をしていないため、Aが傷害罪の「正犯」として処罰されるかは、共謀共同正犯が成立するか否かによります。
共謀共同正犯の成立要件を簡単に検討していくと、共謀についてはAとBはVに暴行を加える計画を綿密に立てており、意志の連絡が十分にあるといえます。
また、どちらも自らの犯罪として実行する意思を有しているため正犯意思も認められそうです。
そうすると、共謀は認められそうです。
次に、AとBの共謀に基づいて、BがVに傷害を加えているため、共謀に基づく実行行為も認められるでしょう。
そうすると、傷害行為に加わっていないAについても共謀共同正犯として「傷害罪」の「正犯」としての責任を負うことになるでしょう。