【事例解説】盗撮ハンターの男が恐喝罪で逮捕(前編)
盗撮ハンターの男が恐喝罪で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
Aさんは、盗撮ハンターとして様々な駅で盗撮犯を捕まえて、警察に通報する様子を撮影して動画サイトにアップするなどしていました。
ある日、Aさんが盗撮犯Bを捕まえたところ、Bが気の弱そうな人物であったため「警察に通報されたくなければ50万円を俺に払え」などと言ってBさんを脅迫しました。
Bさんは警察に逮捕されて、家族や職場に発覚することを恐れ、近くのATMで現金をおろして50万円をAさんに手渡しました。
後日、Bさんは盗撮してしまったことを後悔して、警察に自首するとともに目撃者の男に恐喝されて50万円を渡したことを説明しました。
Bさんからの話を聞いた警察は、恐喝事件として捜査を進め、Aさんを恐喝の疑いで逮捕しました。
(フィクションです。)
盗撮ハンターとは
盗撮ハンターとは、駅や大型ショッピングモールなどの盗撮が起こりやすそうな場所に待ち伏せして盗撮犯を捕まえた後、慰謝料や示談金等の名目で金銭を要求する人たちのことをいいます。
被害女性と結託しているケースもあるようで、被害女性の彼氏などと偽って盗撮犯を脅迫するケースもあるようです。
盗撮ハンターに成立する犯罪
まず、盗撮ハンターは盗撮犯の弱みにつけこんで金銭を恐喝する行為ですので、脅迫罪が成立する可能性があります。
刑法第249条(出典/e-GOV法令検索)では、人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処すると規定されています。
本件では、Aは「警察に通報されたくなければ50万円を俺に払え」などと言ってBさんを脅迫して50万円を受け取っています。
Aの行為には恐喝罪が成立するでしょうか。
恐喝とは、①財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫または暴行であり、②その反抗を抑圧するに至らない程度の行為を言います。
まず①について検討すると、本件では、AはBに対して「警察に通報されたくなければ50万円を俺に払え」と脅して金銭を要求しました。
この発言は、警察への通報により自らが刑事処罰を受ける可能性や職場や家族に発覚する可能性を感じさせるものであるので、Bを畏怖させるに足りる脅迫に該当しそうです。
実際に、Bさんは警察に逮捕されて、家族や職場に発覚することを恐れAの要求に畏怖したようです(①)。
次に、②についてですが、反抗を抑圧する程度の脅迫というのは、例えば、拳銃の銃口を突きつけながら「金を出さないと殺す」などと脅す場合です。
犯行を抑圧する程度の脅迫に至っているようであれば恐喝罪ではなく、強盗罪が問題になります。
本件では、Aの脅迫は口頭によるものであり、物理的な暴力や凶器の使用はありませんでしたので、反抗を抑圧する程度にまでは至っていなかったと言えそうです(②)。
以上より、Aの発言は恐喝に当たり、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。
次回は盗撮ハンターに成立する犯罪の続きを解説します。