【事例解説】痴漢に間違われたトラブルから暴行事件に発展(前編)
痴漢に間違われたトラブルから暴行事件に発展した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
Aさんは電車の対面シートに座って携帯でゲームをしていたところ、スマホのカメラの向きが不自然に見えたようで対面に座っている女性から「盗撮してますよね。」と声を荒げられました。
Aさんはスマホゲームをしていただけだったので否定し、Aさんの横に座っていた人もゲームをしていただけだったことを証言してくれたのでAさんの疑いは晴れましたが女性は文句を言い続けていました。
Aさんは謝罪を求めても女性が謝らなかったことから、カッとなったAさんは女性の肩あたりを強く押してしまいました。
電車の揺れも合わさって女性はシートに倒れ、暴行で被害届を出すといい警察を呼びました。
警察署でお互い話をしましたが、女性が納得せず被害届が出されることになりました。
Aさんは後日警察署に呼出しを受けることになったため弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
暴行罪について
暴行罪については、刑法第208条(出典/e-GOV法令検索)で、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と規定されています。
ここでいう「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使をいうとされています。この定義だけでは分かりにくいですが、とても広い範囲の、多岐にわたる行為が「暴行」に当たり得ます。
殴る、ける、突く、押す、投げ飛ばすなど、身体への接触を伴う物理力を行使する行為は、暴行罪の典型といえます。
たとえば、口論となった相手の肩を軽く押す、などでも暴行罪になり得てしまいます。
また、人の身体に直接接触しなくとも「暴行」と判断されるケースもあります。
例えば、人に向かって石を投げる行為や、バットを振り回す行為などは、相手の身体に触れなくても暴行になり得ますし、唾を吐きかけたり、塩を頭に振りかけたりするような行為でも暴行になり得ます。
暴行は、傷害を負わせるような態様のものでなくともよく、相手の五官に作用して不快ないし苦痛を与える性質のものであれば足りるとされているのです。
ちなみに、暴行の結果、相手に傷害を負わせた場合は、暴行罪よりも重い傷害罪となります。