職質から銃刀法違反が発覚

2020-09-20

職質から銃刀法違反が発覚

職質から銃刀法違反が発覚した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、神奈川県横須賀市に住んでいる会社員です。
ある日、Aさんが会社から自宅へ帰ろうと神奈川県横須賀市の路地を歩いていたところ、巡回していた神奈川県浦賀警察署の警察官から職質を受けました。
その中で、手荷物検査を求められたAさんは、持っていたカバンを警察官に提出しました。
すると、Aさんのカバンの中からツールナイフが出てきました。
このツールナイフは、Aさんが「何かあったときのために持っておこう」と携帯していたものでした。
しかし、警察官によると、そのツールナイフは銃刀法違反に当たるとのことで、Aさんは後日神奈川県浦賀警察署に呼び出されることとなってしまいました。
不安になったAさんは、銃刀法違反についての相談も受け付けている弁護士の無料法律相談に申込み、弁護士から詳しい話を聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・銃刀法違反

銃刀法という法律名を聞いたことがある方も多いかもしれません。
銃刀法は、正式名称を「銃砲刀剣類所持等取締法」という法律で、名前のとおり銃砲や刀剣類の所持や使用等を規制している法律です。

銃刀法では、確かに銃砲や刀剣類の規制を行っていますが、刃が付いているすべての物を刀剣類として規制しているわけではありません。
銃刀法では、以下のように「刀剣類」の定義を定めています。

銃刀法第2条第2項
この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。

つまり、銃刀法の中で「刀剣類」として規制されるのは、「刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた」と「刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く。)」というものに限定されているのです。
この「刀剣類」については、銃刀法で、法令に基づき職務のために所持する場合(銃刀法第3条第1項第1号)などに限り所持が認められており、それ以外の場合に所持すると「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります(銃刀法第31条の16第1項第1号)。

しかし、そうすると今回の事例のAさんが所持していたようなツールナイフは「刀剣類」に当たらないように見えます。
ここで、銃刀法は「刀剣類」だけに限って規制しているわけではないということにも注意が必要です。
銃刀法には、「刀剣類」以外の刃物について、以下のような規定があります。

銃刀法第22条
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。
ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが8センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。

つまり、たとえ「刀剣類」に当てはまらなかったとしても、刃渡り6センチメートルを超える刃物であれば、「業務その他正当な理由による場合」を除いて持ち歩くことが禁止されているのです。
今回のAさんは、職質中の手荷物検査でツールナイフを発見され、そのツールナイフが銃刀法違反であると言われていますが、おそらくツールナイフの刃渡りが6センチメートルを超えるのものであったのでしょう。
また、Aさんは「何かあった時のために」とツールナイフを携帯していたようですが、これが「業務その他正当な理由による場合」に当たらないとされれば、銃刀法第22条に違反すると考えられます。
なお、銃刀法第22条に違反した場合、「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金」となります(銃刀法第31条の17第3号)。

・銃刀法違反に違反しなくても犯罪に?

ここで、「では、『刀剣類』にも刃渡り6センチメートルを超える刃物でもないものであれば携帯できるのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、銃刀法以外にも、刃物の携帯について規定している法律があることにも注意が必要です。
それは、軽犯罪法という法律です。
軽犯罪法には、以下のような条文があります。

軽犯罪法第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
第2号 正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者

軽犯罪法では、正当な理由なしに刃物を隠して携帯することを禁じています。
銃刀法と異なり、軽犯罪法では刃物全般を規制しているため、たとえ刃渡りが6センチメートルを超えなくとも軽犯罪法違反となる可能性があるのです。

今回のAさんのように、職質から銃刀法違反事件に発展してしまえば、「銃刀法違反をするつもりではなかった」「どのように対応すべきなのか分からない」とお困りになる方も多いでしょう。
そんな時こそ、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
初回無料法律相談も受け付けていますので、お気軽にご利用いただけます。
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