傷害事件で幇助犯に問われたら
傷害事件で幇助犯に問われたら
傷害事件で幇助犯に問われてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、福岡市博多区に住んでい女性会社員で、Bさんという恋人がいます。
ある日、AさんはBさんから「Vというやつが気にくわないからヤキを入れてやろうと思っている」「Vは一度痛い目に合わないといけない」などと、Vさんに暴行を加えるつもりであることを打ち明けられました。
そこでAさんはBさんに対し、メッセージアプリで「やるんなら思いっきり痛い目を見せてやらないと」「男ならやらなきゃいけない時がある」「やってやれやってやれ」等とAさんを後押しするメッセージを送りました。
その後、BさんはVさんに対する傷害事件を起こして福岡県博多警察署に逮捕されたのですが、Aさんも傷害罪の幇助を行ったとして逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、どうして傷害事件に直接かかわっていない自分も逮捕されてしまったのか詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・直接かかわらなくても幇助犯に?
ご存知の方も多いように、人に暴力をふるって怪我をさせれば傷害罪となります。
刑法第204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
しかし、今回の事例の傷害事件では、Aさんの恋人のBさんが被害者Vさんに怪我をさせたものであって、Aさん自身はVさんに暴力をふるって怪我をさせたわけではありません。
傷害罪の条文を見ると「人の身体を傷害した者」が傷害罪に問われるわけですから、Aさんが今回の傷害事件に関して罪に問われることは不自然に思えるかもしれません。
しかし、今回のAさんが逮捕されているのは傷害罪の「幇助犯(ほう助犯)」としての容疑をかけられているためです。
幇助犯とは、「正犯を幇助(ほう助)した者」、つまり、簡単に言えば犯罪を実行しやすくするために手助けをした人を言います。
幇助犯については、刑法の以下の条文に定められています。
刑法第62条第1項
正犯を幇助した者は、従犯とする。
刑法第63条
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
つまり、幇助犯となった場合、正犯の刑=犯罪をした人に科される可能性のある刑罰よりも軽い範囲で刑罰を科されることになるということになります。
例えば今回の事例にある傷害罪の場合、傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円の罰金」ですから、これが「正犯の刑」となります。
ですから、傷害罪の幇助犯となった場合、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」よりも軽い範囲で刑罰が決められるということになります。
刑の減軽については、刑法の以下の条文に規定があります。
刑法第68条
法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるときは、次の例による。
第3号 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。
第4号 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。
すなわち、傷害罪の幇助犯となった場合、「7年6月以下の懲役又は25万円以下の罰金」という範囲で刑罰が決められることになるのです。
では、そもそも幇助犯とは具体的にどのようなことをした場合に成立するのでしょうか。
犯罪行為を容易にするというと、例えば殺人行為をしようという人に凶器を渡すような物理的に犯行を手助けするケースが思い浮かびやすいかもしれません。
たしかに、凶器など犯行に使用するものを準備したり提供したり、犯行のための資金を準備・提供したりすることは幇助犯として問われうる行為です。
しかし、今回の事例のAさんは、BさんがVさんを殴るための凶器を渡したわけでもありませんし傷害行為をする場所や環境を提供したわけでもありません。
このような場合でも、AさんはBさんの傷害行為を手助けしたとして傷害罪の幇助犯に問われてしまうのかと疑問に思う方もいるかもしれません。
ここで、幇助犯の場合、手助けする方法は、物理的(有形的)方法に限らず精神的(無形的)方法でもよいとされていることに注意が必要となります。
例えば、Aさんのように傷害行為をしようとしている人(今回の事例であればBさん)に激励をして、その傷害行為をするという意思を強固にすることも、犯罪をすることをたやすくした=手助けをしたと認められ、幇助犯であると判断される可能性があるのです。
ですから、今回のAさんが、BさんがVさんに対して暴行をふるうことを知っていながらそれを後押しするようなメッセージを送っていたことは、傷害罪の幇助犯となる可能性があるということになるのです。
このように、直接傷害事件にかかわっているわけでなくとも幇助犯の容疑がかかり、刑事事件の当事者となってしまうケースが存在します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が、初回無料法律相談や初回接見サービスにて、逮捕が不安な方や逮捕されてしまった方のご相談をお受けしています。
幇助犯等、刑事事件にはなかなか理解しづらい規定が多く存在します。
刑事事件に困ったら、まずは専門家の弁護士に相談をしてみましょう。