【事例解説】会社の倉庫内での傷害事件(前編)
会社の倉庫内での傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
会社員のAさんは、会社の倉庫内で荷下ろし作業をしている際に同僚Vさんから作業の順番に文句を言われました。そこから、口論に発展し、カッとなったAさんは同僚Vさんの胸を押して突き飛ばしてしまいました。
Aさんから押されたVさんは、後ろに転倒した際に腰や手首を痛める怪我を負ってしましました。
周囲の従業員から2人は引き離され別々に聴取をされましたが、会社の上司からVが警察に被害届を出すと言っているということを聞かされました。
不安になったAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
暴行罪・傷害罪について
暴行罪については、刑法第208条(出典/e-GOV法令検索)で、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは,2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と規定されています。
ここでいう「暴行」とは,人の身体に対する不法な有形力の行使をいうとされています。この定義だけでは分かりにくいですが、とても広い範囲の、多岐にわたる行為が「暴行」に当たり得ます。
殴る,ける,突く,押す,投げ飛ばすなど,身体への接触を伴う物理力を行使する行為は、暴行罪の典型といえます。たとえば、道端で激しい口論となった相手の肩を軽く押す、などでも暴行罪になり得てしまいます。
次に、傷害罪は、刑法204条(出典/e-GOV法令検索)で「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
傷害罪は、人の身体を「傷害」する犯罪です。
判例によれば、傷害とは人の生理的機能に障害を加えることです(大判明治45年6月20日)。
例えば、相手を殴って出血させたり、骨折させたりする行為は、人の生理的機能に障害を加えることにあたり、傷害罪が成立する可能性があります。
本件では、口論の末にVさんの胸を押して転倒させ、腰や手首に怪我負わせています。これは人の生理的機能に障害を加えたと評価でき、Aさんの行為には傷害罪が成立する可能性が高いでしょう。