【事例解説】万引きが事後強盗致死傷罪に発展したら

2022-10-09

【事例解説】万引きが事後強盗致死傷罪に発展したら

万引き事後強盗致死傷罪に発展した場合を想定し、その刑事責任と刑事手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例紹介】

「17歳のAさんは、遊ぶお金が欲しかったので、万引きした商品をフリマサイトで転売しようと思い、本屋で万引きをする計画を立てました。
Aさんは本屋で周りの様子を窺って、人が近くにいないことを確認して漫画本を数冊万引きしました。
店員VさんがAさんの万引きに気が付き、VさんがAさんに声をかけたので、Aさんは万引きした本をもって逃げ出しました。
このとき、Aさんは捕まえに来たVさんに体当たりをしました。
Vさんはこの衝撃で後ろに倒れ、頭をコンクリートの縁石に強く打ち付けてしまい、その後搬送先の病院で死亡しました。
結局、Aさんは他の店員に捕まってしまい、警察に事後強盗致傷罪(後に事後強盗致死罪に切り替え)の疑いで逮捕されました。」

(この事例はフィクションです)

【単なる万引きが重罪に】

万引きは刑法235条に定める窃盗罪に当たる行為ですが、刑法には、一定の場合に窃盗をした人を、より罪が重い強盗とすることを定めている規定があります。
その規定が事後強盗罪を規定する刑法238条です。

刑法238条は、窃盗の犯人が、盗んだ物を取り返されることを防ぐ目的、逮捕を免れる目的、罪証を隠滅する目的のいずれかの目的で、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として取り扱うということを定めています。

Aさんは、万引きした後で、Vさんに逮捕されることを免れる目的で、体当たりという「暴行」を加えていますので、事後強盗罪として扱われることになるでしょう。
そして、Aさんは、暴行を加えた際にVさんを死亡させているので、Aさんには刑法240条の強盗致死罪が成立することになるでしょう。

強盗致死罪の法定刑は、死刑または無期懲役となっています。

【17歳の少年が強盗致死事件を起こした場合の法的責任】

17歳の少年刑事事件を起こした場合、少年法が適用されることになりますので、事件については家庭裁判所に全て送られることになります。
そのため、刑事事件を起こした少年に対して刑事裁判が開かれて刑事罰が科されることはなく、家庭裁判所少年の最終的な処遇を決定するというのが基本になります。

ただし、いくつかの場合には、少年でも、大人と同様に刑事裁判が開かれて刑事罰が科される場合があり、こうした家庭裁判所から事件が検察官に送られて通常の刑事手続と一緒になることを「逆送」と言います。
逆送となる場合については少年法に定められていますが、今回取り上げた事例に関係するものとしては少年法20条2項があります。

少年法20条2項は、事件の時に16歳以上の少年が、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」場合には、原則として逆送しなければならないことを定めています。
17歳のAさんが犯した強盗致死罪は、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた」場合に当たりますので、Aさんの事件は通常の刑事手続と同じ流れで進むことになります。

【17歳のお子さんが事件を起こしてしまったら】

原則逆送の対象事件についても、法律上、「調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは」(少年法20条2項)例外的に逆送にならず、家庭裁判所が事件を担当することになります。

強盗致死罪については非常に高い割合で逆送の決定がなされていますが、それでも具体的な事件内容や、少年が置かれている状況などによっては、逆送を回避することができる可能性があります。
このような可能性を少しでも高めるためには、弁護士がいち早く事件に介入することが必要になるでしょう。

また、仮に逆送を回避することができなかったとしても、その後の刑事裁判に備えて、早いタイミングで弁護士から事件についてアドバイスを得ておくことは非常に有益です。
そのため、お子さんが事件を起こして警察に逮捕されているという場合は、弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件のみならず少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
17歳のお子さんが事件を起こしてしまいお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。