【報道解説】15歳の女子中学生が殺人未遂罪で逮捕

2022-09-28

【報道解説】15歳の女子中学生が殺人未遂罪で逮捕

15歳の女子中学生が殺人未遂罪の疑いで逮捕された場合の法的責任や手続きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「東京都渋谷区の路上で20日夜、女性2人が刺された事件で、警視庁は21日、殺人未遂罪の疑いで現行犯逮捕した少女について、埼玉県戸田市に住む中学3年の女子生徒(15)と発表した。
容疑を認め、『死刑になりたくて、たまたま見つけた2人を刺した』と供述しているという。
発表によると、女子生徒は20日午後7時20分頃、渋谷区円山町の路上で、歩いていた杉並区のパート従業員の女性(53)と娘(19)に背後から近づき、背中や腹などを包丁(刃渡り約8・5センチ)で刺して、それぞれ重傷を負わせた疑い。
娘の背中の刺し傷は深さ約10センチに達し、母親は両肩や腹、背中の4か所を切られていた。」

(令和4年8月21日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用)

【15歳の中学生が死刑になることはあるのか?】

報道では、殺人未遂罪の疑いで逮捕された15歳の女子中学生の方が「死刑になりたい」旨の供述をしているとのことです。
15歳の中学生が事件を起こした場合に死刑になることがあるのでしょうか。

そもそも、犯行時に20歳に満たない人(この年齢層の人を男女問わずに「少年」と呼びます)が事件を起こした場合は、少年法が適用されますので、原則として刑罰が科されることはなく、家庭裁判所少年に対する最終的な処遇を決定することになります。

もっとも、例外的に、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、家庭裁判所が、調査の結果、刑事処分を相当と判断したときは、検察官に事件を送致(逆送)して通常の刑事手続で事件が事件が処理されることになります。
殺人未遂罪の法定刑は、殺人罪と同じく死刑または無期もしくは5年以上の懲役となっていますので、報道の15歳の女子中学生は今後、家庭裁判所から逆送されて通常の刑事手続で手続が勧められる可能性があります。

ただ、法定刑に死刑が定められている殺人未遂事件が通常の刑事手続で処理されたとしても、未遂罪については刑を減軽することができますので(刑法43条)、殺人未遂罪で有罪となった場合に死刑が科されることはまず無いと言ってよいでしょう。

また、そもそも少年法51条1項では「罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。」と規定されていますので、犯罪を犯した時点で18歳未満の少年は、たとえ殺人未遂罪ではなく殺人罪を犯した場合であっても死刑になることはありません。

以上より、15歳の中学生については、殺人未遂罪で有罪判決となった場合でも死刑になる可能性はありません。

【お子さんが警察に逮捕されてお困りの方は】

これまでの説明の通り、15歳の中学生が殺人未遂罪で有罪となった場合は、最高でも無期刑という拘禁期間を定めずに言い渡さずに刑務所で拘禁する刑罰になり、死刑が科されることはありません。
しかし、無期刑という刑罰も非常に重い処罰であり、今後の少年の人生に重大な影響を及ぼすことに変わりはありません。

15歳の少年が事件を起こした場合に少年法が適用された場合でも、警察による捜査段階では、大人の刑事事件と基本的には同じになりますので、逮捕の後には勾留という処分がなされて身柄が長期間にわたって拘束される可能性があります。
そのため、15歳の中学生のお子さんが警察に逮捕されたという場合はいち早く弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
お子さんが刃物で人を傷つけて警察の捜査を受けてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。