【報道解説】コンビニのセルフコーヒーの不正利用の窃盗罪から逃走して強盗殺人未遂で逮捕

2022-11-22

【報道解説】コンビニのセルフコーヒーの不正利用の窃盗罪から逃走して強盗殺人未遂で逮捕

コンビニでのセルフコーヒー不正利用を指摘して追ってきたオーナーを車から振り落としたとして強盗殺人未遂の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「群馬県内のコンビニ店でコーヒー用のカップにカフェラテを注ぎ、注意した店のオーナーを車から振り落としたとして逮捕された男が注意された際、『トイレに行きたい』と言って逃げようとしたことが分かりました。
A容疑者(60)は太田市のコンビニ店で、オーナーの男性がしがみついているのに車を250メートルほど蛇行運転し、振り落とした強盗殺人未遂の疑いで送検されました。
男性は、外傷性くも膜下出血の重傷です。
警察によりますと、増倉容疑者はSサイズのコーヒーを110円で購入しましたが、180円のMサイズのカフェラテを注いだところを見つけられ、男性に注意されました。
その際、A容疑者は『トイレに行きたい』と嘘をつき、車に乗り込んで逃走を図ったということです。
A容疑者は『違います』と容疑を否認しています。」

(令和4年10月27日にテレ朝NEWSで配信された報道より引用)

【コンビニのセルフコーヒーの不正利用の罪】

最近のコンビニでは、それぞれの商品に対応したカップをレジで購入した後に購入者自身がコーヒーマシンにカップを置き、代金を支払ったカップに対応する商品のボタンを押すという形態でコーヒーなどの飲み物が販売されています。
コーヒーマシンでボタンを押す際はコンビニ店員ではなくて購入者自身がボタンを押す形となっているために、購入者がレジで購入した代金よりも高い商品のボタンを押して、警察に通報されたり、場合によっては警察に逮捕されるという事件が近年多く発生しているようです。

では、カップを購入した代金よりも高額の商品のボタンを押して飲み物を注いだ場合にどのような犯罪行為が成立するでしょうか。

まず、レジで店員からカップを購入する時点で既にカップの代金よりも高額の商品のボタンを押そうと考えていた場合には詐欺罪が成立すると考えられます。

また、レジで店員からカップを購入する時点では購入したカップに対応する商品のボタンを押そうと思っていたが、コーヒーマシンの前でボタンを押すときになって初めて購入したカップの代金よりも高額の商品のボタンを押そうと思った場合は、窃盗罪が成立すると考えられます。

実際には、どの時点でカップの代金よりも高額の商品のボタンを押そうと思ったのかという判断が困難なため、より適用可能性の広い窃盗罪で検挙されているケースが非常に多いです。

窃盗罪で検挙されるというのは、事件を起こした被疑者にとっては詐欺罪で検挙されるよりも有利であるといえます。
というのも、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役しか定められていない一方で、窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又はは50万円以下の罰金となっていますので、詐欺罪で検挙されて起訴されると必ず正式な裁判が開かれることになりますが、窃盗罪で検挙されて起訴された場合には、法定刑に罰金刑が定められていることから略式手続による起訴を行うことができるからです。

【セルフコーヒーの不正利用を指摘されて逃走した場合の加重犯罪】

刑法238条では事後強盗罪を規定しており、窃盗罪を犯した犯人が、一定の場合に暴行または脅迫を行った場合には、窃盗の犯人を強盗として扱うと定めています。

この一定の場合には、①盗んだ財物を取り返されることを防止する目的、②逮捕を免れる目的、③罪跡を隠滅する目的の3つが定められています。

取り上げた報道では、逮捕された男性は、110円で購入したカップに180円のカフェラテを注ぐというかたちで窃盗をした後に、追いかけて車にしがみついてきたコンビニオーナーから逃れるために、車を250メートルほど蛇行運転して振り落とすという暴行を加えていることから、窃盗の犯人が、②の逮捕を免れる目的あるいは③の罪跡を隠滅する目的で暴行を加えたといえるでしょうから、事後強盗罪が成立すると考えられます。

こうして、窃盗を犯した人が事後強盗罪に該当すると強盗として扱われることになりますので、この上更に、人に怪我を負わせたり、死亡させた場合には刑法240条の強盗致死傷罪が適用されることになります。

強盗致死傷罪には、故意に人を死亡させた場合の強盗殺人、故意に人を怪我させた場合の強盗傷人、故意によらずに人を死亡させた場合の強盗致死、故意によらずに人を怪我させた場合の強盗致傷の4つのパターンが含まれています。

取り上げた報道では、被害に遭われたコンビニのオーナーは外傷性くも膜下出血の重傷を負っているとのことですが、今回行われた暴行が、250メートルほど蛇行運転して車から振り落とすという人を死に至らしめる危険が極めて高い行為であると判断されたために、強盗傷人ではなく、強盗殺人未遂として逮捕されたのだと考えられます。

【強盗殺人未遂で刑事事件化したら】

強盗殺人罪の法定刑は、死刑又は無期懲役のみとなっており非常に刑が重い犯罪です。

強盗殺人未遂を犯した場合には、「その刑を減軽することができる」(刑法43条)こととなっていますが、強盗殺人未遂の法定刑も強盗殺人罪と同じく死刑又は無期懲役のみとなっていますので、強盗殺人未遂も刑が重い犯罪であるといってよいでしょう。
また、強盗殺人未遂として起訴されて刑事裁判となった場合、その刑事裁判裁判員裁判となりますので、通常の刑事裁判よりも異なる手続となります。

そのため、ご家族が強盗殺人未遂の疑いで警察に逮捕された場合は、まずは弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
この初回接見によって、弁護士逮捕されたご家族の方より直接事件についてお話を伺うことができますので、事件の見通しや、今後の手続の流れといったことについて弁護士から説明を受けることが期待できます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が強盗殺人未遂の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。