【報道解説】クロスボウの無許可所持で銃刀法違反で検挙
【報道解説】クロスボウの無許可所持で銃刀法違反で検挙
クロスボウを無許可で所持したとして銃刀法違反の疑いで書類送検された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「自宅でクロスボウ(ボウガン)1丁を違法に所持したとして、岐阜県警岐阜中署は8日、岐阜市の無職男(84)を銃刀法違反(所持)容疑で岐阜地検に書類送検した。
今年3月施行の改正銃刀法で、経過措置終了後の9月15日以降、クロスボウの無許可所持が禁止となり、クロスボウの所持容疑での摘発は全国初とみられる。
県警がクロスボウの回収を進めていた今年9月初旬、男はクロスボウ所持について岐阜中署に相談したが、回収に納得いかないとして無許可でクロスボウを所持し続けていたという。」
(令和4年11月9日読売新聞オンラインで配信された報道より引用)
【銃刀法が改正されてクロスボウの所持が原則禁止されました】
今年の9月15日から改正された銃刀法(正式には「銃砲刀剣類所持等取締法」と言います)によって、クロスボウ(ボウガン)を許可なく所持することが禁止されましたが、今回取り上げた報道は、クロスボウの所持として摘発された日本初のケースとのことです。
改正された銃刀法3条1項によって、一定の例外を除いて、クロスボウの所持が禁止されました。
例外的にクロスボウの所持が許される場合としては、法令に基づいて職務のため所持する場合(銃刀法3条1項1号)や、銃刀法4条に基づいて公安委員会の許可を受けた人が所持する場合(銃刀法3条1項3号)などがあります。
このクロスボウの所持の禁止については、全てのクロスボウの所持が禁止されているわけではなく、一定の条件が定められています。
具体的には、引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定めた値である6.0ジュール以上のクロスボウが禁止の対象になっています(銃刀法3条1項1つ目のかっこ書き、銃刀法施行規則第3条の2及び3条の3参照)。
もっとも、警察庁が市販されているクロスボウで実験したところ、実験に用いたクロスボウのなかでおもちゃのクロスボウを除く全てのクロスボウが6.0ジュール以上の数値を示したという実験結果があるとのことですので、多くのクロスボウが規制の対象になると考えられます。
(参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/crossbow/crossbowpower.html)
こうした銃刀法の規制の対象になるクロスボウを、例外的に許容される場合がなく所持した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(銃刀法31条の16第1項1号)。
【銃刀法の改正を知らずにクロスボウを所持していた場合は?】
今回取り上げた報道では、クロスボウの所持で摘発された男性は、クロスボウの所持が罰則の対象から外されていた期間に警察にクロスボウの相談をしていたという経緯があるとのことですので、男性は銃刀法が改正されてクロスボウの所持が罰則の対象になることは知っていたものと考えられます。
それでは銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウを所持していた場合はどうなのでしょうか。
結論からいえば、銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウを所持していた場合でも、罪に問われる可能性があると考えられます。
クロスボウを所持したことによって罪に問われるには、クロスボウを所持していた人に「罪を犯す意思」(故意)が必要になります。
この「罪を犯す意思」については刑法38条3項本文という規定があり、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」と定めていますので、銃刀法の改正について知らなかったということを理由に罪に問われないということにはならないと考えられます。
そのため銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウを所持したことで警察に検挙されてしまった場合でも前科が付く可能性があります。
前科がつくことを避けたいとお考えの方は、まずは一度弁護士に相談されることをお勧めします。
具体的な事件の内容によっては、検察から起訴を猶予してもらって前科がつくことを回避できる場合がありますので、弁護士に相談してアドバイスを貰うことが有益でしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
クロスボウを無許可で所持したとして銃刀法違反の疑いで警察に摘発されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。