【事例解説】大音量でテレビを流して隣人を睡眠障害に(後編)

2024-04-07

深夜早朝にかけて大音量でテレビを流して隣人を睡眠障害等にかからせた事例について、前編と後編の2回に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

騒音

・事件概要

京都府北警察署は、傷害罪の疑いで看護師の男(43)を逮捕した。
警察署によると、男は、昨年から1年間にわたって週に3回ほど、自分が病院の夜間勤務で家を空けている日の深夜から自宅に帰る早朝にかけて大音量でテレビを流しっぱなしにして隣人に精神的ストレスを与えたとされている。
被害にあった隣人は、精神科の医師から睡眠障害と診断され、慢性頭痛症円形脱毛症となり警察署に被害届を提出した。
取調べに対し、男は、「自分が夜勤明けで眠たい昼間に隣人がうるさくて腹がたっていた」「静かにするよう言っても一向に改善されないので、同じ目に合わせてやろうと思ってやった」と述べている
(フィクションです)

・傷害結果はあったと言えるか?

上述の通り、本件の男の行為は、慢性的な頭痛や睡眠障害という症状を生じさせる現実的危険性がある行為と言えそうです。
もっとも、このような身体的棄損が外観上明らかでない精神的なストレス症状が、常に傷害罪のいう「傷害」にあたるといってよいのでしょうか?
この点、精神的なストレス症状は、脳の機能の傷害に基づくものである以上、通常の身体的機能の傷害と本質的に変わらないとも言えそうです。
しかし、精神的なストレス症状は主観的なものと言わざるを得ず客観性を欠いている上、行為との因果関係も明確でない場合もありますから、精神的ストレス症状の全てを「傷害」にあたるとすることには問題がありそうです。
裁判例を見ると、被害者が医師から精神障害として診断されていることを重視し、それに加え身体的症状が発生しているか、入院等をしているかを考慮しているようです。(井田良「講義刑法学各論<第2版>52頁以下」)
本件では、被害者の男性は、医師から睡眠障害と診断され、慢性頭痛症と円形脱毛症にかかっているようです。
したがって、傷害結果ありとして、傷害罪が成立する可能性があります。

・できるだけ早く弁護士に相談を

傷害罪(出典/e-GOV法令検索)被害者のいる犯罪です。
被害者のいる犯罪では、被害者との間で示談を成立させることが非常に重要です。
早期に示談が成立していれば不起訴となる可能性がありますし、起訴後に示談が成立した場合でも、罪の減軽や執行猶予付判決が得られる可能性があるからです。
もっとも加害者が自分の力で示談交渉をすることは通常困難です。
本件のように、逮捕された場合、身動きが取れませんから被害者が交渉に応じてくれたとしてもスムーズにやり取りをすることが難しくなります。
逮捕されていない場合、加害者が被害者に接触することは不可能ではありません。
しかし、本件の被害者は、長期間にわたって日常生活を送ることを難しくさせ、睡眠障害や頭痛、円形脱毛症に苦しんでいるわけですから、強い処罰感情を持っていることが予想され、示談交渉に応じてくれない可能性があります。

そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士に一任することをおすすめします。
直接加害者とやり取りすることに抵抗を感じる被害者でも、弁護士が相手であれば、示談交渉に応じてくれることは少なくありません

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得のほか、量刑を軽くしたり執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。