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【報道解説】いじめ目的で下着を無理やり脱がせて傷害を負わせ強制わいせつ致傷で逮捕

2022-12-25

【報道解説】いじめ目的で下着を無理やり脱がせて傷害を負わせ強制わいせつ致傷で逮捕

男性の同僚の下着を無理やり脱がせた際に傷害を負わせたとして男らが強制わいせつ致傷逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「警視庁葛飾署は9日、『アート引越センター』社員(27)(東京都江戸川区)、同社アルバイト(52)(葛飾区)ら男4人を強制わいせつ致傷容疑で逮捕した。
葛飾署幹部によると、4人は4月30日未明、社員の男の自宅マンションで同僚の20歳代男性の体を押さえつけて無理やり下着を脱がせ、腹部に全治約3週間のけがを負わせた疑い。いずれも容疑を認めている。
酒に酔った男が服を脱ぐよう迫り、スマートフォンでその様子を撮影していたという。男性が5月に葛飾署に相談して発覚した。」

(令和4年11月14日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用)

【強制わいせつ致傷罪とは】

刑法176条では、13歳以上の者に対して暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立するとしており、さらに強制わいせつ罪によって人を傷害させた場合には刑法181条1項のわいせつ致傷罪が、死亡させた場合には同じく刑法181条1項の強制わいせつ致死罪(あわせて「強制わいせつ致死傷罪」と言うことがあります)が成立することになります。

今回取り上げた報道では、逮捕された男性らは、日常的ないじめとして、被疑者の男性の身体を押さえつけるという暴行を用いて、下着を無理脱がせるというわいせつな行為をし、この時、被害者の男性に腹部に全治約3週間の傷害を負わせた疑いがあるとのことですので、仮にこれが事実であれば、強制わいせつ致傷罪が成立することになるでしょう。

【いじめ目的で下着を脱がせることも「わいせつ」?】

ところで、強制わいせつ罪が成立するためには、昭和45年1月29日に出された最高裁判所の判例によって、「犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる」という性的意図(わいせつ目的)が必要であるとされてきました。
強制わいせつ罪の成立の要件としてわいせつ目的が必要であるとすると、今回取り上げた報道のように、いじめ目的で自分と同じ性別の被害者の下着を無理やり脱がせたという場合はわいせつ目的が存在しないとして強制わいせつ罪が成立しない可能性が高いといえます。
しかし、わいせつ目的を一律に強制わいせつ罪の成立要件とする昭和45年の最高裁判所の判例は、平成29年11月29日に出された最高裁判所の判例によって変更されました。
この平成29年の判例によると、被害者の下着を無理やり脱がすという行為それ自体が性的な意味合いが強い行為を行った場合には、犯人の意図にかかわらず強制わいせつ罪が成立することになると考えられています。
そのため、この平成29年の判例が出された現在では、わいせつ目的で下着を脱がせた場合はもちろん、いじめ目的で下着を脱がせた場合であっても強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。

【ご家族が強制わいせつ(致傷)罪で逮捕されたら】

ご家族が強制わいせつ罪強制わいせつ致傷罪の疑いで逮捕されたことを知った場合は、まずは弁護士に依頼して初回接見にいってもらうことをお勧めします。
この初回接見によって、弁護士が直接逮捕された方から事件について話を聞くことができますので、事件の見通しや今後の手続きの流れなどを知ることができます。

また、強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役刑で、強制わいせつ致傷罪の法定刑は無期又は3年以上の懲役刑となっていて、罰金刑が定められていないことから両者の法定刑は比較的重いといえます。
ただ、このように比較的刑が重い強制わいせつ罪強制わいせつ致傷罪であっても、行ったわいせつ行為の態様や、被害者の方の怪我の程度などによっては、被害者の方と示談を締結することができれば起訴を回避することも可能になる場合があります。
そのためには、弁護士が初回接見をきっかけに事件に早期に関与して、示談を検察官が起訴を決定するまでにまとめることが必須となってくるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が強制わいせつ罪強制わいせつ致傷罪の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】学校内の傷害罪で中学生が逮捕

2022-12-14

【報道解説】学校内の傷害罪で中学生が逮捕

学校内で同級生の顔を殴って鼻やあごの骨を骨折させたとして15歳の男子中学生傷害罪逮捕された刑事事件少年事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「滋賀県長浜市内の中学校の校内で、15歳の同級生の男子中学生の顔を殴り、鼻や顎の骨を折る全治3カ月の大けがをさせた傷害の疑いで15歳の男子中学生を逮捕しました。
警察によりますと、10日午前10時30分頃から40分頃の間に、長浜市内の中学校内の廊下で、15歳の男子中学生が、同じく15歳の男子中学生の顔を数回殴る暴行を加え、鼻や下顎の骨を折る全治3カ月の大けがをさせたということです。
事件の翌日にけがをした男子中学生が父親とともに警察を訪れて事件が発覚、被害届を受けて、捜査した結果、男子中学生を逮捕しました。
調べに対し、逮捕された男子中学生はけがをさせたことは認めた上で、『やりましたが、一発しか殴ってません』と話しているということです。
一方、被害者の男子中学生は『(男子中学生に)因縁をつけられて殴られた』と話しているということです。

(令和4年11月15日に関西テレビで配信された報道より引用)

【学校内で同級生に暴力で怪我させると中学生でも逮捕されることがある】

今回取り上げた報道では、傷害事件が起きたのが中学校の中で、ましてや傷害事件の被疑者が15歳の中学生であるということから、中学生が警察に逮捕されたということに驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、傷害は刑法204条に規定されている立派な犯罪で、仮に20歳以上の人が傷害罪として有罪となった場合は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があるものになりますので、たとえ15歳の中学生が学校内で傷害事件を起こした場合は、当然警察による捜査が開始される可能性があります。

今回取り上げた報道の傷害事件では、被害者の方の怪我が全治3カ月の鼻や下顎の骨の骨折ということで、怪我の程度が比較的大きい傷害事件と言えますので、警察は在宅ではなく、15歳の男子中学生の身柄を拘束して捜査を進めるために、逮捕に踏み切ったものと考えられます。

15歳の中学生が傷害事件を起こした場合は少年事件として事件が処理されることになりますが、警察による捜査段階では15歳の中学生であっても大人が刑事事件を起こした場合と基本的には同じ取扱いを受けることになります。
そのため、逮捕後も引き続き15歳の中学生の身柄を引き続き拘束するために勾留という処分がなされる可能性があります。

勾留が決まると原則として10日間身柄が拘束されることになりますし、勾留期間は延長することが可能ですので、10日経過後も延長としてさらに10日間身柄が拘束される可能性があります。

【子供を逮捕したと警察から連絡が来たら?】

このように中学生のお子さんが傷害の疑いで警察に逮捕されたと知った場合は、いち早く弁護士に初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
突然警察に逮捕されて家族や友人と話すこともできない状況に置かれたお子さんにとっては、自分が今後どうなるのかひどく不安な気持ちになっていることが予想されますが、弁護士が初回接見に行くことで、事件の見通しや今後の手続の流れなどを、お子さんにも分かるように説明することができますので、お子さんの不安な気持ちを和らげることできるでしょう。

また、逮捕後72時間や土日祝日は基本的にはご家族の方であってもお子さんと接見することができませんが、弁護士はこうした制約がなく自由にいつでも接見することができますので、接見ができないご家族の代わりに、弁護士がご家族の方からの伝言を逮捕されたお子さんにお伝えすることができますので、こうした伝言を通して、お子さんを支えることも可能になるでしょう。
これに加えて、ご家族の方が逮捕されたお子さんを心配に思う気持ちも解消できるように、ご家族の方に対しましても初回接見に行った弁護士から事件の見通しや今後の流れなどについてご説明させて頂きます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
中学生のお子さんが傷害事件を起こしてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

【報道解説】クロスボウの無許可所持で銃刀法違反で検挙

2022-12-03

【報道解説】クロスボウの無許可所持で銃刀法違反で検挙

クロスボウ無許可所持したとして銃刀法違反の疑いで書類送検された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「自宅でクロスボウボウガン)1丁を違法に所持したとして、岐阜県警岐阜中署は8日、岐阜市の無職男(84)を銃刀法違反所持)容疑で岐阜地検に書類送検した。
今年3月施行の改正銃刀法で、経過措置終了後の9月15日以降、クロスボウ無許可所持が禁止となり、クロスボウ所持容疑での摘発は全国初とみられる。
県警がクロスボウの回収を進めていた今年9月初旬、男はクロスボウ所持について岐阜中署に相談したが、回収に納得いかないとして無許可クロスボウ所持し続けていたという。」

(令和4年11月9日読売新聞オンラインで配信された報道より引用)

【銃刀法が改正されてクロスボウの所持が原則禁止されました】

今年の9月15日から改正された銃刀法(正式には「銃砲刀剣類所持等取締法」と言います)によって、クロスボウボウガン)を許可なく所持することが禁止されましたが、今回取り上げた報道は、クロスボウ所持として摘発された日本初のケースとのことです。

改正された銃刀法3条1項によって、一定の例外を除いて、クロスボウ所持が禁止されました。
例外的にクロスボウ所持が許される場合としては、法令に基づいて職務のため所持する場合(銃刀法3条1項1号)や、銃刀法4条に基づいて公安委員会の許可を受けた人が所持する場合(銃刀法3条1項3号)などがあります。

このクロスボウ所持の禁止については、全てのクロスボウ所持が禁止されているわけではなく、一定の条件が定められています。
具体的には、引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定めた値である6.0ジュール以上のクロスボウが禁止の対象になっています(銃刀法3条1項1つ目のかっこ書き、銃刀法施行規則第3条の2及び3条の3参照)。
もっとも、警察庁が市販されているクロスボウで実験したところ、実験に用いたクロスボウのなかでおもちゃのクロスボウを除く全てのクロスボウが6.0ジュール以上の数値を示したという実験結果があるとのことですので、多くのクロスボウが規制の対象になると考えられます。
(参考:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/crossbow/crossbowpower.html)

こうした銃刀法の規制の対象になるクロスボウを、例外的に許容される場合がなく所持した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(銃刀法31条の16第1項1号)。

【銃刀法の改正を知らずにクロスボウを所持していた場合は?】

今回取り上げた報道では、クロスボウ所持で摘発された男性は、クロスボウ所持が罰則の対象から外されていた期間に警察にクロスボウの相談をしていたという経緯があるとのことですので、男性は銃刀法が改正されてクロスボウ所持が罰則の対象になることは知っていたものと考えられます。

それでは銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウ所持していた場合はどうなのでしょうか。
結論からいえば、銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウ所持していた場合でも、罪に問われる可能性があると考えられます。
クロスボウ所持したことによって罪に問われるには、クロスボウ所持していた人に「罪を犯す意思」(故意)が必要になります。

この「罪を犯す意思」については刑法38条3項本文という規定があり、「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」と定めていますので、銃刀法の改正について知らなかったということを理由に罪に問われないということにはならないと考えられます。
そのため銃刀法の改正について知らずに、うっかりクロスボウ所持したことで警察に検挙されてしまった場合でも前科が付く可能性があります。

前科がつくことを避けたいとお考えの方は、まずは一度弁護士に相談されることをお勧めします。
具体的な事件の内容によっては、検察から起訴猶予してもらって前科がつくことを回避できる場合がありますので、弁護士に相談してアドバイスを貰うことが有益でしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
クロスボウ無許可所持したとして銃刀法違反の疑いで警察に摘発されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。

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