【事例解説】隣の家の外壁を破壊した建造物等損壊事件

2023-07-28

 ご近所トラブルから隣の家の外壁に穴をあけたことによる建造物損壊事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介

 Aさんは、隣の家に住むVさんとウマが合わず、常日頃からトラブルになっていました。
 ある日、些細なことからVさんと言い争いになったAさんは、怒りのあまり、Vさんの自宅の外壁に大きな穴を開けました。
 Vさんは、Aさんが外壁に穴を開けたところを目撃していましたので、Aさんに対して、警察に被害届を出す意向があるという話をしました。
(この事例はフィクションです)

建造物損壊罪とは?

 事例のAさんは、Vさんが所有する家の外壁に大きな穴を開けています。
 このように、誰かの物を壊したときは器物損壊罪になると思われている方がいらっしゃるかもしれませんが、破壊した物が他人の所有する建造物であった場合は器物損壊罪ではなく建造物損壊罪が成立する可能性があります。
 建造物損壊罪は刑法260条で「他人の建造物…を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。」と規定されています。
 この条文を見ての通り、建造物損壊罪が成立するためには、他人が所有する「建造物」「損壊」することが必要になります。

「建造物」とは?

 それぞれの言葉の意味について簡単に説明します。
 まず、「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物のことをいい、屋根があって壁または柱で支えられており、土地に定着して、少なくともその内部に人が出入りできるものを意味しています。
 そのため、事例のAさんが大きな穴を開けた外壁は、「建造物」に当たると考えられます。
 「建造物」に該当するそのほかの例としては、天井板や敷居、屋根瓦、住居の玄関扉といったものがあります。

「損壊」とは?

 また、「損壊」とは、物理的にその全部または一部を破壊する行為に加えて、物理的な破壊がなくても建造物の効用を害する行為までも意味しています。
 事例のAさんが壁に大きな穴をあけるという行為は、建造物を物理的に破壊する行為と言えますので、「損壊」に当たると言えるでしょう。
 それ以外にも、例えば、他人が住む家の外壁にラッカースプレーで大きな落書きをしたというような場合は、外壁を物理的に破壊したというわけではありませんが、落書きによって建物の外観ないし美観じゃ著しく汚損されて、原状回復に相当の困難を生じさせるようなものであるといえますので、建造物の効用を害する行為として「損壊」に当たると考えられます。

建造物損壊罪で前科を付けたくないとお考えの方は

 建造物損壊罪の法定刑は5年以下の懲役となっています。
 これは、刑法261条の器物損壊罪の法定刑が3年以下の懲役または30万円以下の罰金若しくは科料となっていることと比較すると明らかなように、建造物損壊罪の法定刑は器物損壊罪の法定刑よりも重く定められています。
 さらに、建造物損壊罪の法定刑には罰金刑が定められていませんので、不起訴とならなければ、必ず公開の法廷で刑事裁判を受けることになります。

まずは弁護士に相談を

 このような建造物損壊罪について前科を付けたくないとお考えの方は、いちはやく弁護士に今後の対応について相談されることをお勧めします。
 弁護士に依頼して、建造物損壊罪の被害者の方と示談をすることができれば、不起訴となって建造物損壊罪前科がつくことを回避する可能性を高めることができるでしょう。

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
 建造物損壊罪前科を付けたくないとお考えの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。