器物損壊事件と示談交渉

2020-12-27

器物損壊事件と示談交渉

器物損壊事件示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、大阪府堺市南区に住んでいます。
Aさんは、かねてからご近所トラブルになっていた隣人のVさんの態度に腹を据えかねて、Vさんに迷惑をかけてやろうとVさんの車のタイヤをパンクさせました。
Vさんは、車のタイヤがパンクさせられていることに気が付き、大阪府南堺警察署に被害届を出しました。
被害届を受理した大阪府南堺警察署の捜査の結果、防犯カメラの映像等からAさんの犯行であることが発覚し、Aさんは大阪府南堺警察署に呼び出されることになりました。
Aさんは、警察官から器物損壊事件の被疑者として取り調べると言われ、今後の対応や自分の受ける処分について不安に思い始めました。
そこでAさんは、どうにか示談をして穏便に済ませることはできないかと弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・器物損壊罪

器物損壊罪は、刑法の以下の条文に定められている犯罪です。

刑法第261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪のいう「物」とは、財物のことであり、動物も含みます。
今回の事例のAさんのように、Vさん(「他人」)の物である自動車のタイヤも、もちろん器物損壊罪の「物」に当たります。
そして、先ほども触れたように「物」には動物も含まれるため、例えば他人の飼っているペットを傷つけた(「傷害した」)場合などにも器物損壊罪の成立の可能性が出てくることになります。
また、建造物以外の不動産も器物損壊罪の客体となります。
さらに、違法な物、例えば違法に掲示された政党演説会告知用ポスター等も器物損壊罪の「物」に当たります。
器物損壊罪と聞くと単純な「物」だけが客体になるように思えますが、一般のイメージよりもその客体は広いのです。

続いて、器物損壊罪の「損壊」についても確認しておきましょう。
器物損壊罪の「損壊」は、物質的に器物自体の形状を変更し、あるいは滅尽させる場合だけでなく、事実上又は感情上その物を本来の用途に従って使用できなくすることも指します。
すなわち、その物の本来の効用を失わせることが器物損壊罪の「損壊」という言葉の意味なのです。
今回のAさんがした、タイヤをパンクさせるといった物を物理的に壊してしまう行為だけでなく、物理的には壊れていなくとも使えない状態にするといった行為も器物損壊罪の「損壊」と判断されるのです。
例えば、食器に小便をかけるといった行為は食器を物理的に壊しているわけではありませんが、誰も小便をかけられた食器を食器として使いたいとは思わないでしょうから、その食器を使えなくしている=食器の本来の効用を失わせている=器物損壊罪の「損壊」行為をしていると判断されるということなのです。

一方、「傷害」とは、動物を殺傷すること、つまり、動物としての効用を失わせる行為です。
先ほど触れたような、他人のペットを傷つけるというような行為がこの「傷害」に当たるといえます。

・器物損壊罪と示談交渉

器物損壊罪は親告罪とされているため、告訴がなければ起訴されません。

刑法第264条
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

先ほど掲載した器物損壊罪は刑法第261条です。
親告罪とは、被害者等の告訴権者が告訴しなければ公訴の提起=起訴ができない犯罪です。
そして、告訴とは、犯罪被害に遭ったことの申告に加えてその犯人を処罰することを求める意思を示すことを指します。
告訴と同じくよく聞かれる言葉に被害届(の提出)という言葉がありますが、被害届(の提出)は単に犯罪被害に遭ったことの申告をすることを指します。
つまり、今回のVさんは、器物損壊罪の被害に遭ったことを届け出た段階にあるということになります。

器物損壊罪のような親告罪の刑事事件では、告訴がなければ起訴されることがないため、被害者と示談をして告訴を取り下げてもらったり告訴をしない約束をしてもらえれば、起訴されることがない=器物損壊罪で処罰されることはなくなるということになります。
例えば、今回の事例のVさんはまだ被害届の提出をしている段階で、告訴をしていないようですから、ここで示談をして告訴を出さない約束をしてもらえれば、Aさんがこの事件で処罰を受けることはなくなるということになります。

ただし、すでに告訴されて起訴されていた場合には、示談をしても告訴・起訴を取り下げることはできません。
器物損壊事件での処罰を避けたいのであれば、起訴前に示談締結を目指すことが重要なのです。
そのためには、早い段階で弁護士に相談・依頼することが効果的と言えるでしょう。
特に今回のAさんの事例のようなご近所トラブルから派生したような器物損壊事件では、当事者同士での解決をすることが難しい場合も多いため、専門家であり第三者である弁護士を間に入れることが望ましいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が初回無料法律相談を行っています。
器物損壊事件でお悩みの際は、お早めにご相談ください。