しつけのつもりが監禁罪に?
しつけのつもりが監禁罪に?
しつけのつもりが監禁罪になってしまったという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都立川市に住んでいる主婦のAさんには、4歳になる息子のVくんがいます。
Aさんは、Vくんがなかなか言うことをきかないことに腹を立て、しつけとしてVくんを物置の中に閉じ込めました。
Vくんは長時間物置の中に入れられたことでパニックになり泣き叫んでいましたが、Aさんは「しつけなのだから嫌がっていないと意味がない」と思い、そのまま何時間も放置しました。
こうしたことが度々起こり、Vくんの泣き声を聞いた近所の人が「ここしばらくずっとVくんがひどく泣き叫んでいるようだ。もしかしたら虐待かもしれない」と警視庁立川警察署に通報。
警視庁立川警察署の警察官がAさんらの自宅に駆けつけ、Aさんは監禁罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさんが逮捕されてしまったという連絡を受け、急いで刑事事件に強い弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
・監禁罪
監禁罪とは、刑法に定められている犯罪の1つです。
刑法第220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
刑法第220条では、「不当に」「人を」「逮捕」又は「監禁」することを禁止しており、このようにして人を「逮捕」した場合には逮捕罪が、「監禁」した場合には監禁罪が成立します。
また、逮捕・監禁罪にあたる行為をして人を死傷させた場合には、逮捕致死傷罪・監禁致死傷罪が成立することになります(刑法第221条)。
では、監禁罪は具体的にどういったことをすると成立するのでしょうか。
まず、監禁罪の「不当に」とは、正当な理由なくという意味です。
例えば、警察官が逮捕状に基づいて行う逮捕は、正当な理由のある「逮捕」と言えます。
そして、「監禁」とは、相手を限られた場所から脱出できないようにする行為を指し、相手の移動の自由を奪う行為を指します。
多くは建物内に閉じ込めるといった手法で監禁行為が行われることが多いですが、オートバイの後部座席に人を乗せ、時速40キロで走行し、その人が降ろして欲しいと言っているのに走行し続けるという場合でも、後部座席からの脱出が著しく困難になっているので監禁罪が成立します。
また、監禁行為の手段として、建物内に閉じ込めて鍵をかけるといった行為以外にも、睡眠薬を飲ませて移動を不能にしたり、「そこを動くと殺すぞ」と脅迫して恐怖心による心理的拘束を加えることで移動を不能にしたりする方法で監禁行為を行っても監禁罪が成立することになります。
監禁罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」となっているため、起訴され有罪判決となれば、執行猶予が付かない限り刑務所へ行くことになります。
こうしたことからも、監禁罪は非常に重い罪であることが分かります。
不起訴や執行猶予獲得のためには、早い段階から弁護士に相談していくことが重要です。
・しつけと監禁罪
親であれば、自分の子供にしつけをするということは自然なことです。
しつけの過程で子供を叱ったり、何らかの罰を与えることもあるかもしれません。
民法でも、親には子供の教育等をする権利と義務が定められており、同時に「懲戒権」という教育等のために子供の不当な行為にたいして罰を与える権利が認められています。
民法第820条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
民法第822条
親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。
しかし、民法第822条の規定にもある通り、認められているのはあくまで「監護及び教育に必要な範囲内」での懲戒権です。
しつけだから、しつけのためだからといってなんでも認められているわけではありません。
当然、度を越した行為であればしつけとして済まされることなく、犯罪になってしまいます。
今回のAさんの行為も、Aさんとしては「しつけのためだ」と考えているようですが、何時間も物置に閉じ込めておく行為がしつけの範囲に収まるものではないと判断されれば、監禁罪が成立すると考えられます。
しつけのつもりで監禁事件などの刑事事件に発展してしまった場合、被害者である子供と加害者である親が同居していることが多いです。
そうしたケースでは、被害者と加害者の接触を避けるため、逮捕や勾留といった身体拘束を伴う捜査が行われることが少なくありません。
突然の逮捕に困ったら、まずは刑事事件に強い弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、しつけのつもりの行為で刑事事件に発展した事例についても、ご相談・ご依頼を承っています。
まずはお気軽にご相談ください。