【事例解説】救急隊員に暴力をふるって公務執行妨害罪の疑いで逮捕
酒に酔って路上で横になっていたところ、駆け付けた救急隊員に暴力をふるって公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例紹介
Aさんは、学生時代の友人たちとの飲み会で飲み過ぎてしまい、帰り道、路上で横になって休んでいました。
Aさんが横になっているのを見かけた通行人の誰かが、救急車を呼びました。
駆け付けた救急隊員Vさんは救護活動のためにAさんに声をかけたところ、Aさんはせっかく横になって休んでいたのを邪魔されたと勘違いして、Vさんを殴ったり、押し倒したりといった暴行を加えてVさんの救護活動を妨害しました。
Vさんは警察に通報し、Aさんは公務執行妨害罪の疑いで現行犯逮捕されました。
(この事例はフィクションです)
公務執行妨害罪とは
事例のAさんは、公務執行妨害罪の疑いで逮捕されています。
公務執行妨害罪は、公務員による職務の円滑な執行を保護するために設けられた犯罪で、刑法95条1項で以下のように規定されています。
「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」
公務執行妨害罪が成立するための要件のひとつである「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員のことをいいます(刑法7条1項)。
Vさんは救急隊員ですが、救急隊員は消防士として各自治体に採用されている公務員にあたります。
そして、Aさんは、救急隊員の職務である救護活動にとりかかっているVさんに対して、殴ったり押し倒したりという暴力を加えていますので、これは「職務を執行する」に当たって「暴行…を加え」ているということになるでしょう。
そのため、事例のAさんには公務執行妨害罪が成立する可能性が高いといえます。
もし相手に怪我を負わせてしまったら?
もし、事例のAさんが、119番通報のより駆け付けた救急隊員のVさんに暴力を加えて怪我を負わせてしまった場合は、先ほど説明した公務執行妨害罪に加えて刑法204条が規定する傷害罪が成立することになります。
このように、ひとつの行為が2つ以上の罪名に触れることを観念的競合(刑法54条1項前段)と言います。
観念的競合の場合には、成立する犯罪の中で「その最も重い刑により処断する」ことになります。
公務執行妨害罪と傷害罪を比較すると、公務執行妨害罪の法定刑は3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金であり、傷害罪の法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっていますので、傷害罪の刑によって処断されることになります。
ご家族が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたことを知ったら
警察からの連絡で、ご家族の方が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたことを知ったら、いち早く弁護士に依頼して初回接見に行ってもらうことをお勧めします。
公務執行妨害罪の疑いで逮捕されたという連絡を受けたご家族様からすると、警察からは逮捕されたという以上の情報は得られず、事件の詳細や今後どうなるのかといったことについては、問い合わせをしても詳しく答えてもらえず、今後について不安になることが多いかと思います。
このような場合に、弁護士に初回接見を依頼されると、弁護士が逮捕されたご本人様から事件について直接お話を伺うことができますので、事件の詳細や、今後どのような流れで事件が処理されていくのかといったことについて弁護士からアドバイスをもらうことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、公務執行妨害罪をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が公務執行妨害罪の疑いで逮捕されて今後についてご不安な方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。