【事例解説】万引き現場から離れた場所での暴行による事後強盗致傷事件
万引き犯が、万引き現場から離れた場所で、追いかけてきた店主を殴って怪我を負わせた事後強盗致傷事件を参考に、事後強盗致傷罪とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
大阪市在住の自営業男性Aが、同市内の酒店で缶ビール1本を万引き後、酒店から約100m付近の路上で、Aを追いかけてきて捕まえようとした店主男性Vの腕を殴り、Vに全治2週間の打撲を負わせたとして、事後強盗致傷の容疑で逮捕されました。
警察の調べによると、Aは「怪我を負わせるつもりはなかった」と事後強盗致傷の容疑を一部否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)
事後強盗罪における「窃盗の機会」とは
窃盗犯が、財物を取り返されるのを防ぐこと、逮捕を免れること、罪跡を隠滅すること、のいずれかの目的をもって「暴行」を加えた場合、強盗罪が成立する、と定められています(刑法第238条)。
これを事後強盗といいますが、「暴行」は「窃盗の機会」に行われる必要があるとされ、「窃盗の機会」といえるためには、窃盗行為と暴行に時間的・場所的接着性があり、暴行時において、被害者等から容易に発見されて、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況が継続していたことが必要とされます。
本件Aは窃盗犯であること、AがVの顔面を殴った行為は、Vから財物を取り返されるのを防ぐこと、又はVに現行犯逮捕されるのを免れる目的をもって加えた「暴行」に該当することは争いがないものと考えられます
また、「暴行」は、万引きの現場である酒店から100m程度しか離れていない路上において、万引きを現認後、そのまま追跡してきた店主Vに対して行われた暴行であり、「窃盗の機会」が継続中に行われたものと認められる可能性が高いと考えられます。
よって、Aに事後強盗の成立が認められるほか、Vの致傷について、Aは「怪我を負わせるつもりはなかった」と傷害の故意を否定していますが、故意の暴行により傷害が発生した場合では、例え傷害の故意がなかったとしても、傷害罪が成立することから、事後強盗致傷罪まで成立し得ると考えられます。
事後強盗致傷事件の刑事弁護
事後強盗致傷罪の法定刑は、無期又は6年以上の懲役のため、事後強盗致傷罪で起訴された場合、情状酌量などによる刑の減軽がない限り、執行猶予が付くことはなく、懲役刑の実刑となる可能性が高いです。
本件で、Vの怪我が全治2週間と比較的軽傷で済んでいることから、Vに対して真摯な謝罪と被害弁償を行った上、示談が成立することで、不起訴処分や刑の酌量減軽による執行猶予を得られる余地も生じるため、示談交渉は、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。
また、事後強盗致傷罪は、法定刑に無期懲役を含むため、事後強盗致傷罪で起訴された場合、裁判員裁判の対象となります。
裁判員裁判では、審理の前に事件の争点や証拠を整理して審理の計画を立てる「公判前整理手続」が必ず開かれる点など、通常の刑事事件の裁判とは異なる点も多いため、起訴される見込みとなった場合は、裁判員裁判の経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。
まずは弁護士に相談を
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、事後強盗致傷事件において、示談成立による不起訴処分を獲得した実績があります。
事後強盗致傷事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。