【事件解説】万引き犯が店員を転倒させ逃走した事後強盗事件
ドラッグストアで万引き後、店員を転倒させ逃走したとして、事後強盗罪で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件概要
静岡市在住の主婦Aが、同市内のドラッグストアで化粧品を万引きして店外に出た直後、呼び止めた店員女性Vの身体に接触し床に転倒させ、逃走したとして、事後強盗の容疑で逮捕されました。
静岡中央警察署の調べに対し、Aは、「万引きしたことに間違いはないが、逃走の際に店員に接触し転倒させるつもりはなかった。」と供述しています。なお、Vに怪我はないとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、一部事実を変更したフィクションです。)
事後強盗罪における「暴行」
万引きは、通常、窃盗(刑法第235条)にあたる行為ですが、本件のように、万引き犯が、万引きに気づいた店員や警備員らに捕まらないよう逃走する際に、店員らに「暴行」を加えたりすると、窃盗罪ではなく強盗罪が成立する場合があります。
これを事後強盗といいますが、具体的には、窃盗犯が、財物を取り返されるのを防ぐこと、逮捕を免れること、罪跡を隠滅すること、のいずれかの目的をもって「暴行」を加えた場合に成立すると定められています(刑法第238条)。
本件Aが、呼び止めた店員Vを転倒させ逃走したことは、Vに現行犯逮捕されるのを免れる目的をもった行為といえます。
また、事後強盗罪における「暴行」とは、「人の反抗を抑圧する程度の有形力の行使」とされ、Aの接触により床に転倒したVは、すぐに立ち上がりAに抵抗することが困難な状態になったといえます。
よって、窃盗犯であるAが、「逮捕を免れるために暴行」したとして、事後強盗罪が成立する可能性があると考えられます。
事後強盗事件の刑事弁護
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、事後強盗罪の法定刑は、強盗罪と同じく、5年以上の有期懲役と格段に重くなり、事後強盗罪で起訴された場合、原則として執行猶予が付くことはなく、懲役刑の実刑となる可能性が高いです。
本件で、Aは「店員に接触するつもりはなかった」と供述していることから、事後強盗の故意(罪を犯す意思)を争うことも考えられますが、故意は、積極的に結果の発生を意図する場合だけでなく、結果が発生するかもしれない、又は発生してもかまわない、という認識がある程度でも認められるため、本件のような状況で、故意を争うのは容易ではないと思われます。
他方で、暴行の態様が比較的軽微であり、Vに怪我もないことから、被害者であるVとドラッグストアに対する真摯な謝罪と被害弁償を行った上、示談が成立することで、不起訴処分や刑の酌量減軽による執行猶予を得られる可能性を高めることが期待できます。
万引きは、常習性があることも多く、被害店舗の経営に大きな打撃を与える行為であることから、被害店舗によっては、被害弁償には応じるが示談交渉には応じない、加害者に厳罰を求める、という強い態度を示す場合も少なくないため、示談交渉は、刑事事件に強く、示談交渉の経験豊富な弁護士への依頼をお勧めします。
まずは弁護士に相談を
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、事後強盗事件において、示談成立による不起訴処分を獲得した実績があります。
事後強盗事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。