器物損壊事件

器物損壊罪の概要

器物損壊罪は,刑法261条に,「前3条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と規定されています。

 

1 成立要件

・「他人の物」

「前3条に規定するもの」とは,公文書(公用文書毀棄罪の対象),私文書(私用文書毀棄罪の対象),建造物(建造物等損壊罪・同致死傷罪の対象)をいい,これら以外の,建造物を除く不動産や,航空機,自動車など財産権の対象となる一切の物件が器物損壊罪の対象となります。

・「損壊し,又は傷害した」

「損壊」は,物質的に物の全部,一部を害し又は物の本来の効用を失わせる行為をいうと解釈されています。

過去の裁判例には,食器に放尿する行為や窓ガラスや書棚等に多数のビラを貼り付ける行為が「損壊」にあたるとしたものがあります。

「傷害した者」についても処罰されるとされている趣旨は,「物」に動物も含まるためです。

他人が飼っているペットを傷つけた場合にも,刑法261条によって処罰されることを明らかにしているものです。

裁判では,養殖池の水門を開いて養殖中の鯉を養殖池の外へ流出させる行為について,器物損壊罪が成立するとした例があります。

 

2 親告罪

器物損壊罪は,親告罪であるとされています(刑法264条)。親告罪とは,告訴権者による告訴がなければ,検察官は事件を起訴することができないという制度です。

器物損壊罪における告訴権者は,損壊された物の所有者が該当しますが,損壊された物を賃借していた人も告訴権者に含まれます。

 

3 軽犯罪法との関係

物質的に物の全部,一部を害し又は物の本来の効用を失わせるにいたらず,損壊行為に達しないとされたものについては,軽犯罪法1条33号の「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし,若しくは他人の看板,禁札その他の標示物を取り除き,又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者」に該当し,軽犯罪法違反として,拘留又は科料に処せられる場合があります。

 

弁護活動の例

1 事実を争う場合

身に覚えがないにもかかわらず器物損壊罪の容疑をかけられて逮捕又は捜査されてしまった場合,まずは取調官による虚偽の自白がとられないようにする必要があります。

「身に覚えがない」という話を取調官にした場合,取調官は,あの手この手を使って自白させようと誘導してくることがあります。

虚偽の自白であっても,一度調書というかたちで書面が作成されてしまうと,裁判になった際に不利に取り扱われることがあります。

このような事態を避けるためにも,取調べを受ける際に弁護士から適切なアドバイスを受けておくことが重要です。

器物損壊事件では,被害者や目撃者の供述が重要になることがあります。

したがって,器物損壊事件で無実・無罪を争うためには,弁護士を通じて,目撃者や被害者の供述を争い,警察や検察庁などの捜査機関が十分な証拠を持っていないことを主張して,不起訴処分又は無罪を求めていく必要があります。

 

2 事実を争わない場合

器物損壊罪の成立に争いがない場合には,器物損壊罪が親告罪とされていることから(刑法264条),公訴が提起されるよりも前に,被害者に謝罪と被害弁償をし,告訴の取消しをしてもらうことで,不起訴処分を獲得することができ,前科がつかなくなります。

他方,すでに起訴が決定した後に告訴が取り消されても,一度決定した起訴は覆りません。

しかし,公訴が提起された場合でも,被害者と示談することにより,その刑罰を少しでも軽くすることが可能となります。

したがって,器物損壊罪の成立に争いがない場合でも,弁護士に依頼し,示談交渉を進めることにより,前科がつくことや罪を大幅に軽くすることが考えられます。

 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,器物損壊事件を起こされてお困りの方に対して、刑事事件を中心に取り扱う弁護士が直接無料相談させていただきます。

また,身体拘束されている方のために初回接見サービスもご用意しております。

ぜひ一度,お問い合わせください。

 

暴力事件のお問い合わせ・無料相談・出張相談

ページの上部へ戻る