家庭内暴力事件

家庭内暴力事件の特徴

近年,社会問題となっている家庭内暴力の問題は,事案により傷害罪や暴行罪といった粗暴犯として処罰されることもあります。

警察庁のまとめによれば,2014年度に全国の警察が把握した家庭内暴力の件数は5万9072件で,年々増加傾向にあります。

家庭内暴力の特徴としては,家庭内という閉鎖された空間で行われるため,被害が明るみになりにくいということがあります。

これは,容疑者の側からすれば,客観的な証拠が少なく,被害者の言い分が重要になること,被害者の側からすれば,客観的な証拠をできるだけ多く集めておくことが重要になることを意味します。

家庭内暴力事件で問題となりうる罪名の例

  1. 身体的な被害等を伴うもの
    暴行罪,傷害罪など
  2. 精神的な圧力を伴うもの
    脅迫罪,強要罪など
  3. 物的損害を伴うもの
    器物損壊罪など
  4. 性的暴力を伴うもの
    強制わいせつ罪,強姦罪など

このほか,つきまとい行為や迷惑メール等の送付については,ストーカー規制法や各都道府県の迷惑行為防止条例が,刃物や銃器等を使用している場合には,銃刀法違反や暴力行為等処罰法違反が成立することがあります。

 

家庭内暴力の加害者として疑いをかけられた方へ

1 弁護士を通じて不起訴処分又は無罪判決になるよう主張する

身に覚えがないにも関わらず,家庭内暴力で傷害や暴行の容疑を掛けられてしまった場合,弁護士を通じて,警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対して,不起訴処分又は無罪判決になるよう主張する必要があります。

 

2 被害者への被害弁償及び示談交渉を行うことが急務

家庭内暴力による傷害や暴行の事実関係に争いのない場合,弁護士を通じて,被害者への被害弁償及び示談交渉を行うことが急務になります。

被害届が提出される前に,被害者に対して被害を弁償して示談を成立させることができれば,警察未介入のまま前科をつけずに事件を解決できる可能性があります。

事件としてすでに警察が介入している場合であっても,被害者との間で,被害弁償及び示談を成立させることで,逮捕・勾留等の身柄拘束を回避したり早期釈放に結びつけることで職場復帰や社会復帰が出来る可能性を高めることができます。

また,起訴猶予による不起訴処分となれば前科はつきませんので,前科による様々な不利益を避けることもできます。

 

3 減刑及び執行猶予付き判決を目指す

裁判になった場合でも,被害者との間で被害弁償及び示談を成立させること,犯行が悪質でないこと,動機が突発的なものであることなどを主張して,大幅な減刑及び執行猶予付き判決を目指すことが出来ます。

 

4 身柄拘束を解くための弁護活動

家庭内暴力を原因とする暴行罪や傷害罪等で逮捕・勾留されてしまった場合には,事案に応じて,証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを主張し,釈放や保釈による身柄拘束を解くための弁護活動を行います。

 

家庭内暴力の被害に遭われた方へ

家庭内暴力の問題は,前に述べたように家庭の内部で起きているという特殊性がありますが,それらの被害を被った場合,加害者の行為が,暴行罪・傷害罪などに該当する場合には,告訴や被害届を提出して加害者の刑事責任を追及することも考えられます。

被害届や告訴は口頭でも可能ですが,警察が告訴を受理しない場合も多く,弁護士に告訴状の作成と提出を依頼するほうが確実でしょう。

 

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法)

深刻化する配偶者からの家庭内暴力に対応するため,被害者の保護を目的として,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律が制定されました(通称,DV防止法)。

 

1「配偶者からの暴力」の意義

「配偶者」は,男性,女性を問いません。事実婚や元配偶者(離婚前に暴力を受け,離婚後も引き続き暴力を受ける場合)も含まれます。

生活の本拠を共にする交際相手,元生活の本拠を共にする交際相手も対象となります(DV防止法1条1項,3項)。

「暴力」とは,身体的な暴力のみならず,精神的・性的暴力も含まれます。

ただし,後に述べるように,保護命令申立ての対象は,身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫に限定されています(DV防止法1条1項)。

 

2 対応方法

(1)相談

都道府県の婦人相談所など適切な施設が、配偶者暴力相談支援センターの機能を果たしています。

また、市町村が設置している配偶者暴力相談支援センターもあります。

・配偶者暴力相談支援センターの対応

  1. 相談又は相談機関の紹介
  2. カウンセリング
  3. 被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護
  4. 被害者の自立生活促進のための情報提供その他の援助
  5. 保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助
  6. 被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助

 

・警察の対応
被害者の意思を踏まえ,配偶者の検挙,指導・警告,自衛・対応策についての情報提供などの適
切な措置をとります。

 

(2)一時保護

婦人相談所が,配偶者からの暴力を受けた被害者の一時保護業務を行っています。

婦人相談所は,各都道府県に必ず1つ設置されています。

 

(3)自立支援

配偶者暴力相談支援センターが,自立支援のため,生活の支援,就業の支援,住宅の支援等に関する様々な情報を提供しています。

 

(4)保護命令

配偶者からの身体に対する暴力を受けている被害者が更なる身体に対する暴力により,又は生命等に対する脅迫を受けた被害者が身体に対する暴力により,その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに,被害者からの申立てにより,裁判所が配偶者に対し,保護命令を出します(DV防止法10条)。

保護命令には,被害者への接近禁止,被害者の子又は親族等への接近禁止,電話等の禁止,住居からの退去を内容とするものがあります。

被害者への接近禁止,被害者の子又は親族等への接近禁止,電話等の禁止については,効力は6か月ですが,住居からの退去については,効力は2か月になります。

なお,保護命令に違反した場合には,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります(DV防止法29条)。

 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,家庭内暴力事件でお困りの方に対して,刑事事件を中心に取り扱う弁護士が初回無料で法律相談いたします。

また,身体拘束されている方に対しては,初回接見サービスもご用意しております。

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