大阪府箕面市の過剰防衛傷害事件

2019-06-16

大阪府箕面市の過剰防衛傷害事件

~ケース~

Aさん(20代男性)は,大阪府箕面市内の街を歩いている際,すれ違いざまにVさんと肩がぶつかった。
AさんはVさんに軽く謝ったが,AさんはVさんから因縁を付けられた。
その後,AさんとVさんは口論になり,VさんがAさんの胸倉を掴み頬に平手打ちをした。
その後もVさんが暴行を続けようとしたので,カッとなったAさんはVさんの右頬を殴打し,Vさんは全治1週間の怪我を負った。
通行人の通報で駆けつけた大阪府箕面警察署の警察官によってAさんは傷害事件の被疑者として事情を聞かれることになった。
なお,Aさんは趣味でボクシングジムに通っており,プロボクサーのライセンスを持っていた。
(フィクションです)

~傷害罪~

今回のケースでは,AさんはVさんを殴って怪我を負わせてしまっているので傷害罪(刑法204条)が成立すると考えられます。
傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

~正当防衛~

しかし,AさんはVさんから胸倉を掴まれ平手打ちをされた事に反撃したのですから,正当防衛(刑法36条)は成立しないのでしょうか。
刑法36条1項は「急迫不正の侵害に対して,自己又は他人の権利を防衛するため,やむを得ずにした行為は,罰しない。」と定めています。
正当防衛は犯罪に該当する行為を「罰しない」という強力な規定になっていますので,適用されるかどうかは具体的な要件を満たす必要があります。

まず,正当防衛は急迫不正な侵害に対して行われなければなりません。
急迫とは法益の侵害が切迫していること,不正とは違法であること,侵害とは権利に対する実害や危険があることを言います。
今回のケースでは,AさんはVさんから現に暴行を受けていますので急迫不正な侵害があったといえるでしょう。

では,AさんはVさんに平手打ちをされ,カッとなって殴っていますが,このような場合でも防衛のための行為と言えるのでしょうか。
怒りや逆上などから反撃した場合には,防衛とは異なる動機となりますので「防衛の意思」は存在せず,正当防衛は成立しないと考えられていました。
しかし,急に他者から攻撃を受けた場合に冷静さを保って防衛の目的のみから反撃することは難しいでしょう。
そのため,裁判所は防衛の意思の内容を「急迫不正の侵害を認識しつつ,これを避けようとする単純な心理状態」と解釈を変更し,憤激や逆上から反撃行為を加えても直ちに防衛の意思がないとされることはなくなりました。
従って,AさんはVさんの攻撃(平手打ち)に対してカッとなったとはいえ,反撃として殴打したのですから,正当防衛が直ちに成立しないとは言えないでしょう。

加えて,正当防衛に必要な要件の1つである「やむを得ずした」とは,防衛行為が必要かつ相当であることと解されています。
必要性とは,反撃行為が権利を防衛する手段として必要最小限度の行為であるとする理解が有力です。
また,裁判所は「やむを得ずした」か否かを,必要性よりも相当性の有無という形で判断する傾向が強いようです。
相当性は結果の相当性および手段の相当性によって判断されます。
結果の相当性とは守ろうとした法益に対し,防衛行為がもたらした結果が著しく不均衡ではないことを言います。
たとえば,洗濯物を盗まれないように犯人を死亡させてしまった場合などは結果が著しく不均衡であるといえます。
手段の相当性とは,防衛行為と侵害行為の危険性の均衡をいいます。
この手段の危険性は客観的に判断され,相当性は,具体的状況の下において社会通念を基準として判断されます。

さて,今回のケースではAさんはVさんの顔を殴り返したという事案です。
問題は,Aさんはプロボクサーのライセンスを持っていたということで,一般の人が他人を殴った場合と事情が異なります。
一般の人に比べて格闘技の有段者やプロライセンスを持っている場合,攻撃行為の危険性が高いと判断されます。
その為,Aさんのような場合,防衛の手段として相当性を欠くと判断されてしまう可能性も出てくるでしょう。

~過剰防衛~

刑法36条2項は「防衛の程度を超えた行為」=過剰防衛について情状により任意的減免を認めています。
防衛の程度を超えるとはやむを得ない程度,つまり相当性を超えることを意味します。
先ほど触れたように,Aさんの反撃行為はボクシングのプロライセンスを持っていることから相当性を超えていると判断されてしまい,正当防衛とならない可能性もあります。
しかし,過剰防衛であると認めてもらえれば,刑の減免が認められる場合もあります。
こうした正当防衛過剰防衛が問題となるような刑事事件では,まずは刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
正当防衛過剰防衛の主張をお考えの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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