兵庫県尼崎市 立ち小便で器物損壊事件

2019-04-02

兵庫県尼崎市 立ち小便で器物損壊事件

兵庫県尼崎市在住のAはある日の深夜,酒に酔ってV宅の玄関前で立ち小便をした。
その際,玄関前に置いてあった大理石の置物および玄関の塀にAの尿がかかった。
たまたま外に出てきたVにAが立ち小便しているところを発見され,通報によりかけつけた兵庫県尼崎東警察署の警察官にAは逮捕された。
(フィクションです)

今回のケースでAには軽犯罪法違反,器物損壊罪,公然わいせつ罪が成立することが考えられます。
まずはそれぞれの条文を確認しましょう。

軽犯罪法第1条
左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。
26号 街路又は公園その他公衆の集合する場所で,たんつばを吐き,又は大小便をし,若しくはこれをさせた者

刑法第261条
(略)他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

刑法第174条
公然とわいせつな行為をした者は,6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

今回のAがしてしまったV宅の玄関前での立ち小便ですが,公道からV宅玄関に向かって立ち小便をしたものです。
街路で小便をしていますので軽犯罪法第1条の26号違反となるでしょう。

では,Aに器物損壊罪は成立するのでしょうか。
器物損壊罪のいう「損壊」とは物理的な損壊に限らず,心理的に使用できなくするような行為も含まれると解されています。
そのため,他人の物に自身の尿をかけてしまう行為は,心理的に物を使用できなくする行為となり器物損壊罪となる可能性があります。
判例は,料理店の食器に放尿した行為について、器物損壊罪の適用を認めています。
食器を入念に消毒すれば再使用はできるが、一度尿の付いた食器は誰も使いたがらないので器物損壊罪が適用されました(大判明治42年4月16日刑録15輯452頁)。

さらに,Aに公然わいせつ罪は成立するでしょうか。
今回のケースでは立ち小便をするために陰部を露出していると思われます。
陰部を露出する行為は公然わいせつ罪のいうわいせつな行為に該当します。
しかし,公然わいせつ罪のいう「公然」とは不特定または多数人が認識しうる状態を指します(最決昭和32年5月22日刑集11巻5号1526頁)。
本件では,公道で陰部を露出していることから,不特定又は多数の人が認識する可能性のある状態であったと言えることから,たとえ目撃者がいなくとも,公然わいせつ罪が成立する可能性があります。
ただし,通行人や目撃者等がいなければ,公然わいせつ罪として理論上成立はしたとしても,公然わいせつ事件として立件される可能性は低くなることも考えられます。

今回のケースで,仮にAには軽犯罪法違反および器物損壊罪が成立するとした場合,どういった刑罰を受ける可能性があるのでしょうか。
軽犯罪法に規定されている「拘留」とは1日以上30日未満の身体拘束をいい,軽犯罪法や器物損壊罪に規定のある「科料」とは1000円以上1万円未満の金銭を徴収することをいいます。
また,拘留の判決が出ることは非常に稀で,1年間で数件しかありません。
科料は事案にもよりますが,判決として出されることはあります。

また,軽犯罪法違反の場合,悪質な事案でなければ警察段階で事件を終了させる微罪処分や,送検されてしまっても起訴猶予の不起訴処分となることも多いです。
一方,器物損壊罪の場合は情状次第では起訴されてしまう可能性があります。
ただし,器物損壊罪は刑法264条で「告訴がなければ公訴を提起することができない」と定められています。
すなわち,被害者の方からの告訴がなければ検察官は起訴できないという規定になっています。

今回のケースでは被害弁償をし,Vから告訴を取り下げてもらえれば不起訴となる可能性は非常に高いでしょう。
そのため,弁護士はVと被害弁償や慰謝料の支払いなどを打診し,告訴を取り下げてもらえるように示談交渉を行っていくことになるでしょう。
器物損壊罪などの親告罪の場合,怒りの感情から加害者が被害者の方に直接会って示談するというのは難しい場合が多いです。
また,せっかく被害弁償や慰謝料などを支払っても,有効な示談書が作成できず告訴を取り下げてもらえないという場合も考えられます。
そのような事態を避けるために示談交渉を含む法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
他人の物を壊してしまった器物損壊罪でお悩みの方,示談交渉をお考えの方は0120-631-881までお気軽にお電話下さい。
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兵庫県尼崎東警察署までの初回接見費用:37,000円)