被害者の同意と刑事事件②~傷害罪の場合~

2019-09-24

被害者の同意と刑事事件②~傷害罪の場合~

福岡市南区に住むAさんは、お金に困っていたことから自己名義の自動車にかけていた任意保険会社から保険金をだまし取ろうと考えました。
そこで、Aさんは、同じくお金に困っていた知人Bさんに自動車の保険金詐欺をもちかけ、話し合った結果、Aさんが車を運転する加害者役、Bさんが車に轢かれる被害者役を務めることになりました。
そして、Aさんは、Bさんめがけて自動車を運転したところ、アクセル、ハンドル操作を誤り、想定以上のスピードで自動車をBさんに衝突させてしまいました。
そして、その衝撃でBさんを路上に転倒させ、路上に頭を強く打ち付けさせてBさんを意識不明の状態にしてしまいました。
慌てたAさんは、110番、119番通報しました。
そして、Aさんは駆け付けた福岡県南警察署の警察官に、保険金詐欺のため自動車事故を装ったことなどを話すと、傷害罪で逮捕されてしまいました。
その後、Bさんは死亡したことから、Aさんに対する容疑は傷害罪から傷害致死罪に切り替わりました。
(フィクションです。)

前回の「被害者の同意と刑事事件①」では、

・被害者の同意(承諾)の意義
・被害者の同意によって犯人(被疑者、被告人)が不可罰とされるための要件
・被害者の同意によって影響を受ける犯罪とそうではない犯罪

についてご紹介し、傷害罪については、被害者の同意によって影響を受ける、つまり、「行為の違法性がなくなり(阻却され)」、その結果、犯人は処罰されないことがある、ということもご紹介しました。
今回は、ではなぜ、Aさんが傷害罪傷害致死罪に問われているのかご説明いたします。

~Bさんの同意は有効な同意ではない?~

BさんはAさんからの誘いに同意し、被害者役を買って出ているようです。
しかし、前回ご紹介しましたが、被害者の同意が本来の同意といえるためには、「被害者の同意に基づいてなす(Aさんの)行為が、その目的、動機、方法、態度、程度等において国家・社会の倫理規範に違反せず、社会的相当性を有すること」が必要なのです。
この点、Aさんの行為の目的は「保険金詐欺」ですから、その目的・動機において社会的相当性を有するものとは到底いえません。
したがって、Bさんの同意は有効な同意とは認められないのです。

判例も(昭和55年11月13日)「被害者が身体傷害を承諾したばあいに傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的,、体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきものであるが、本件のように、過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を騙取する目的をもって、被害者の承諾を得てその者に故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせたばあいには、右承諾は、保険金を騙取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであって、これによって当該障害行為の違法性を阻却するものではないと解するのが相当である。」としています。

Aさんは運転する車をBさんにぶつけ、意識不明という重症を負わせていますから、この時点で傷害罪が成立します。

~殺すつもりがない場合は傷害致死罪~

そして、傷害と(相当)因果関係のある死亡という結果を発生させてしまった場合は傷害致死罪に問われてしまいます。
殺すつもりがあった場合は殺人罪ですが、殺すつもりがなかった場合は傷害致死罪に問われます。

刑205条
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

なお、詐欺罪は、保険会社に対する欺罔行為、つまり保険担当員に対する保険金請求申し込み行為があってはじめて成立する犯罪ですから、その行為すらない本件では詐欺罪は成立しません。

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