強盗致傷罪の成立を争う弁護活動

2019-03-28

強盗致傷罪の成立を争う弁護活動

Aらは、VにAの借金を肩代わりさせるために、大阪府豊能郡のとある場所にVを呼び出し暴行を加え、怪我を負わせた。
こうした暴行を受けたことから、Vは後日、Aの借金の一部を肩代わりして返済するに至った。
Vから相談を受けて捜査を開始した大阪府豊能警察署の警察官は、Aを強盗致傷罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は、暴力事件に強いと評判の刑事事件専門の弁護士に相談した。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~強盗罪・強盗致傷罪における「暴行・脅迫」~

刑法236条は、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取し」(刑法236条1項)または「前項の方法により(=暴行又は脅迫を用いて)、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた」(刑法236条2項)者を、強盗罪に処する旨を規定しています。
強盗罪は、財産犯であると同時に人身犯(人の身体や生命に危険を及ぼす罪)であることから重く処罰される重大犯罪です。
本件では、借金の肩代わりという形で「財産上不法の利益」を得ようとしていますので、いわゆる2項強盗罪(Aの場合暴行によって怪我をさせているので強盗致傷罪)の成否が問題となります。

強盗罪における「暴行又は脅迫」とは、財物強取(刑法236条1項)あるいは財産上不法の利益を得ること(刑法236条2項)に向けられたものであり、被害者の反抗を抑圧するに足りるものであることが必要であるという解釈が確立しています。
そして、被害者の反抗を抑圧するに至ったかどうかは、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りるものであるか否かによって判断されます。
この判断の際には、犯人と被害者の関係性や犯行時の客観的事情などが総合的に考慮されることになります。

もっとも本件のように、暴行された犯行現場において財物や財産上の利益が移転するのではなく、後に被害者自身の積極的な行為によって財物や財産上の利益が移転する場合には別の考慮が必要になります。
この点に関し、近時の裁判例では、暴行後に一旦解放され、その後に被害者自身の積極的行動が必要となる場合、強盗罪が成立するための「暴行又は脅迫」は、犯行現場において財産が移転する通常の強盗の場面よりも強度の「暴行又は脅迫」が必要となるとしています(福岡高判平成29・9・19参照)。
したがって本件において、強盗罪にいう「暴行」があったといえるためには、AがVとの関係において従前より優位であったことや、暴行に使われた凶器が危険なものであったことなど、強度の「暴行」があったといえる必要があります。

そして、上記裁判例がそうであったように、強盗罪にいう反抗を抑圧するに足りる「暴行又は脅迫」があったとはいえない場合には、未遂罪すら成立しないことから強盗致傷罪の成立も否定されることになります。
本件のようなケースで強盗致傷罪が成立しないとなれば、恐喝罪と傷害罪が成立するにとどまると考えられます。
強盗致傷罪が成立する場合と恐喝罪と傷害罪が成立するにとどまる場合とでは、処断刑において大きな差が生じます。
なぜなら、強盗致傷罪(刑法240条前段)が無期懲役を含む極めて重い刑罰を科しているからです。

また、恐喝罪が未遂にとどまる場合には、刑の減軽もありうることになります。
このようなことから、強盗罪に関する弁護活動においては「暴行又は脅迫」があったといえるのかが争点となることも少なくありません。
したがって、弁護士としては、起訴前・起訴後に関わらず、強盗罪が成立しないことを主張するなど、事実関係を詳細に聴取した上での弁護活動を行うことが考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強盗事件強盗致傷事件を含む暴力事件に強い刑事事件専門の法律事務所です。
刑事事件における弁護活動においては、最新の判例・裁判例を含む実務の動向に関する専門知識が不可欠です。
強盗致傷事件で逮捕された方のご家族は、24時間対応しているフリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせ下さい。
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