逮捕監禁致死傷事件

逮捕監禁致死傷罪の概要

刑法第221条は,「前条の罪を犯し,よって人を死傷させた者は,傷害の者と比較して,重い刑により処断する。」と規定し,逮捕監禁致死傷罪について定めています。

 

1 成立要件

・「前条の罪を犯し」

「前条の罪」とは,逮捕監禁罪のことを指します。逮捕監禁致死傷罪が成立するためには,前提として逮捕監禁罪が成立することが必要です。

令状に基づくものや被害者の承諾があった場合など,適法な逮捕監禁行為の結果として人が死傷した場合には,逮捕監禁致死傷罪は成立しません。

 

・「よって人を死傷させた」
逮捕監禁致死傷罪が成立するためには,逮捕・監禁行為と人の死傷結果との間に因果関係があることが必要です。

一般に,人の死傷結果が逮捕・監禁行為そのもの又はその手段である行為から生じた場合に,逮捕・監禁行為と人の死傷結果との間に因果関係があると認められます。

また,被害者自身又は第三者の行為により死傷の結果が生じた場合にも因果関係があると認められる場合があります。

実際の裁判では,停車中の自動車のトランク内に被害者を監禁中に後方から走行してきた自動車が衝突して被害者が死亡した事例で,逮捕監禁致死罪の成立を認めています。

 

2 法定刑

逮捕監禁致死傷罪は,傷害の罪と比較して,上限下限とも重い方によって処断すると定めています。

つまり,逮捕監禁致傷罪については,3月以上15年以下の懲役,逮捕監禁致死罪については,3年以上の有期懲役が科せられます。

 

3 他の犯罪との関係

暴行罪・脅迫罪

逮捕・監禁の手段として暴行・脅迫をしても,その暴行・脅迫は,逮捕監禁致死傷罪に含まれ,別個に暴行罪や脅迫罪は成立しません。

暴行・脅迫が逮捕・監禁の手段としてではなく,全く別個の動機からされたものであるときは,別個に暴行罪・脅迫罪が成立します。

 

強要罪

暴行・脅迫による逮捕監禁致死傷罪が成立する場合には,これにより被害者の権利の行使を妨害したとしても,別個に強要罪は成立しません。

 

弁護活動の例

1 因果関係がないことを主張する

逮捕監禁致死傷罪は,人の死傷結果が,逮捕・監禁行為そのもの又はその手段である行為から生じた場合に,因果関係が肯定されます。

また,被害者自身や第三者の行為から生じた場合でも,因果関係が肯定されることがあります。

他方,逮捕・監禁の手段としてではなく,全く別の原因から被害者に暴行を加えて負傷・死亡させてしまった場合には,逮捕監禁致死傷罪ではなく,別個に傷害罪が成立します。

被害者に死傷結果を負わせてしまったけれども,その結果が逮捕・監禁行為そのもの又はその手段である行為から生じていないことを主張することで,因果関係が存在せず,逮捕監禁致死傷罪の成立を阻止できる可能性があります。

 

2 被害者・遺族対応

逮捕監禁致死傷事件では,被害弁償や示談の有無及び被害者やその遺族の処罰感情が,被疑者・被告人の処分に大きく影響することがあります。

被害弁償・示談をすることにより,被害者やその遺族に処罰感情がないことなどを検察官に対して主張することが,被疑者・被告人にとって有利な結果を得るうえで重要となります。

また,身体拘束から解放するためにも,示談交渉をまとめるということは重要です。

被害者と示談したという事実は,当事者間で事件が解決し,被害者も被疑者を許しているという点で身体拘束の必要性に影響するからです。

そのため,早期の身柄解放を得るためにも被害者との迅速な交渉・示談締結が大きな影響を与えます。

示談交渉は当事者間でも行うことができますが,被害感情を悪化させてしまったり,交渉のテーブルについてもらえなかったりと,当事者間での交渉は困難を極めることが多いです。

そこで,第三者である弁護士を介することで,被害者や遺族の感情を抑えつつ,交渉をスムーズに進めることができます。

 

3 身体解放活動

逮捕・勾留等によって身体拘束されている場合には,早期の身体解放を目指して活動いたします。

具体的には,逮捕段階であれば,検察官・裁判官に対して,逮捕に引き続く身体拘束である勾留をしないよう働きかけます。

勾留決定が出てしまった後については,勾留決定に対する準抗告という不服申し立てを行うなどして,早期に釈放するよう活動します。

 

4 裁判員裁判への対応

逮捕監禁致死事件は,裁判員裁判の対象事件になります。

裁判員裁判とは,一般の市民の方が職業裁判官と一緒に有罪・無罪及び有罪の場合の刑の重さ(量刑)を決める裁判制度のことです。

裁判員裁判は,一般の方が参加する制度になりますので,専門用語を並べるだけでなく,分かりやすい裁判をする必要があります。

また,通常の刑事裁判と異なる手続が多い制度になりますので,手続の面での専門性も問われることになります。

弊所では,裁判員裁判も多数経験しておりますので,これらの点についての十分な対応実績があります。

 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,逮捕監禁致死傷事件でお困りの方に対して,刑事事件を中心に取り扱う弁護士が初回無料で法律相談いたします。

また,身体拘束されている方に対しては,初回接見サービスもご用意しております。

ぜひ一度お問い合わせください。

 

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